能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

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2024年3月14日木曜日

米ドラマ FX『将軍/Shōgun』(2024) 第4話 The Eightfold Fence :Sex &Violenceの回




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『Shōgun』(2024) TV Mini Series
/米/Hulu, FX/カラー/55–70 minutes
Creators: Rachel Kondo, Justin Marks
Based on Shōgun by James Clavell
No. of episodes: 10話
Release: February 27, 2024 – April 23, 2024
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米国 FXにて。オリジナルの放送は2024年3月12日。


セックス&バイオレンスの回。西洋の若いオーディエンス(ミステリアス・エキゾティック・ジャパンを喜ぶ衆)向けのサービス回でしょう。内容的には最後の数分まで話があまり進まないし、ワタクシ的にはフィラー(隙間埋め)の回 笑。スマヌ



★ネタバレ注意
  

大坂を脱出して網代に辿り着いた一行。吉井虎永(真田広之)は勝手に江戸に帰ってしまって、ジョン・ブラックソーン(コスモ・ジャーヴィス)=按針鞠子さん(アンナ・サワイ)が、樫木藪重(浅野忠信)と彼の甥・央海(金井浩人)の元、網代の港町に残される。按針の船乗りの仲間は全員江戸に送られたらしい。それなのに大砲などの武器は藪重の元に残している不思議。

その按針を網代に残す目的は… 藪重の軍に西洋式の戦い方を6カ月間トレーニングするため。旗本の地位を与えられた按針は網代で土地と女性(虎永の家臣で切腹させられた宇佐美の奥方の)宇佐美藤(穂志もえか)をパートナーとして与えられる。鞠子さんは通訳として按針の側に。

それにしても虎永は按針と武器を藪重の元に残すのは危なくないか?実際にも劇中、藪重の甥・樫木央海が「按針の武器を奪って石堂に渡そう」などと言っている。確かにそれは十分可能。藪重達が按針を殺害して石堂に寝返るのは簡単なこと。だから虎永の考えが無謀にも思えた。

一方按針さんは、だんだん日本の生活にも慣れてきた様子で、温泉に入ったり納豆を試したりしてライフ・イン・ジャパンをエンジョイ中。いかにもサービス回だな。これから戦で忙しくなるだろうし、この回でそういうまったりジャパン・ライフを見せたのだろう。


お決まりサービスのハダカもあった。出た出た。なかなか生々しい光景でちょっと驚いた。それにしてもお菊(向里祐香)はただの遊女なのか、それともスパイとか忍者だったりするのだろうか? 按針の温泉シーンは無難。女性が一緒にハダカにならなくてよかった。

ただ…鞠子ちゃんはどうなの?文太郎はやっぱり助からなかったのか。そうか。

結局この細川ガラシャ風鞠子さんは、もうガラシャの人物像とは全く違ってきてますね。そもそも関ケ原の時は細川ガラシャは大坂にいてそれで命を落とすことになるので設定が既に違っている。しかし鞠子さんがそうなるということは…宇佐美藤さんの立場はどうなるのだろう。

ちょっとまて…
今もう一度そのシーンを見直してきた。
…按針が誰かといい夜を過ごして(暗闇だったのだろう)、翌朝、鞠子さんが按針に「今日はご機嫌ね」と言えば「そうだよ…オトモダチとの一夜の後なら」と嬉しそうに答える(按針は鞠子だったと思っている)。すると鞠子さんが「じゃあ遊女も大丈夫なのね(男が相手じゃなくてもよかったのね)、よかったわ。藤さまと私は彼女(遊女)があなたへのいい贈り物になると思ったのよ」と言う。按針は不思議そうな顔をして「え、わからない。僕は君が…」と不思議そうな顔のまま。そして「あれはとても素晴らしい贈り物だったよ」と下を向いてしみじみと言う。

ぇえええ?私も鞠子さんだと思ったぞ。そしてこの会話はたぶん藤さんにはわかっていないですね。ポルトガル語(英語)だから。そして鞠子さんは一人ふふふと笑顔。なんだなんだなんだ…。

あれは鞠子さんよね。でも秘密にしているのですね。う~む。私はね、第4回で二人がそうなってしまったことに「結構早いな」と驚いた。原作と1980年のドラマもそうだったのかな。この二人はもっと後になってから結ばれるものだろうと思っていた。


そして最後はバイオレンス。急に来ましたね。びっくり。しかし大変な問題だ。事件を起こしたのは虎永の息子・吉井長門(倉悠貴)。これどうする?石堂(平岳大)の仲間を攻撃したらもう後には引けないだろう。藪重が焦ってましたね。

かなりグロですが、しかしあれほどのダメージを受けた人間が普通に喋れるとは思えない。あまり痛そうじゃないもんね。このような場面は西洋の「Game of Thrones/ゲーム・オブ・スローンズ」もこういう感じなのでしょうか。グロはいけませんよグロは。これからもこういう感じなのかな~。ヤダヤダ


鞠子さんのアンナ・サワイさんはこれからハリウッド・スターになりますね。堂々としてかっこいい。すごく綺麗。彼女はこれから様々な海外の映画に出る女優さんになると思う。 そして按針君のコスモ・ジャーヴィス君の魅力が私には今のところいまひとつわからないのだ。ちょっと私には骨太でガサツ過ぎる。鞠子さんとの翌朝のドキドキシーンはちょっと可愛かったけれど、なんだか全体に荒っぽい印象。声も割れている。昔のリチャード・チェンバレンは船乗りにしてはインテリすぎ細過ぎな感じがしたけれど、実際の三浦按針はどちらかと言えばこういう骨太な感じだったのだろうか。 悪声と言えば浅野忠信さんの藪重のキャラがちょっと面白くなってきた。浅野さんは声がガシャガシャに割れているといつも思うのだけれど(スマヌ)しかしこの藪重のキャラはすごく面白い。表情豊かで悪声もキャラに合っていていい。彼は予測不可能。


2024年3月6日水曜日

米ドラマ FX『将軍/Shōgun』(2024) 第3話 Tomorrow is Tomorrow :ハリウッド・スケールの活劇の回



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『Shōgun』(2024) TV Mini Series
/米/Hulu, FX/カラー/55–70 minutes
Creators: Rachel Kondo, Justin Marks
Based on Shōgun by James Clavell
No. of episodes: 10話
Release: February 27, 2024 – April 23, 2024
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米国 FXにて。オリジナルの放送は2024年3月5日。
昨日放送。早速週末まで待ちきれずに一人で視聴。


この回はアクション回です。ハリウッド仕立てのお金をかけたアクションが見れる。

もうすっかりワタクシ取り込まれてますね。不満はない。面白い。真田さんがかっこいいな~…真田さんはラストサムライからもう無茶苦茶かっこよくて、真田さんと言えば「うじおぉ~」と旦那Aが喜ぶ。オトコから見ても真田さんはかっこいいそうです。もちろんケンさんも。



★ネタバレ注意



さて今回も日本側とポルトガル側の対立が描かれる。…吉井虎永(真田広之)がポルトガルの(黒い)野望を知ったため船の出航を許可しなかったことから、不満を溜めるポルトガル側。

そして虎永の大阪城からの脱出を疑う石堂和成(平岳大)。ジョン・ブラックソーン(コスモ・ジャーヴィス)が機転を利かせて騒いだことで脱出成功。

ところが道中、虎永の一行はキリシタン大名の木山右近定長(ヒロモト・イダ)と石堂の軍勢に襲撃される。なんとか港まで逃げ船に乗り込むが、漁船に乗り込んだ敵が行く手を阻む。そこで虎永は巨大なポルトガル船に助けを求める。


山中で木山の軍勢に襲われるバトル・シーン。早速真田さんの殺陣が見られるのが嬉しい。そしてポルトガル船にガードされながら敵に囲まれた港を脱出する様子がいかにもハリウッド・スケール。お金をかけてますね~。この回はドラマの3話目。ただ危機から脱出するだけの回でこんなにお金をかけて撮るとは…なんと贅沢な。

このブログの第2話では「日本の文化が丁寧に表現されていて~」などと書いたけれど、この回はアクション回。ただただ映画を見るように楽しんだ。面白かった。


ハリウッドが日本の時代劇をお金をかけて撮ってくれることの醍醐味。お金がかけられているから日本のドラマでは撮れないシーンもしっかり映像として見せてくれるのが嬉しい。今回は漁船をなぎ倒すポルトガル船に興奮した。ジョンの船を(第1回でジョンが助けた)ロドリゲスが救うのも嬉しい。娯楽ドラマとしてよく出来てると思う。楽しかった。

もうすっかりハマった。「ハリウッドの時代劇なんて極端なエキゾティズムが…」なんて重箱の隅をつついて心配するよりも、ただただ大掛かりな娯楽活劇として楽しんだ方がいいのだろうなと思い始めた。すごく面白い。


Battlement

バトルメント…日本語で馴染みの言葉がでてこないのだけれど、西洋でいうところのお城の城壁の上に人が歩けるようになっている場所…通路。このドラマの大阪城のデザインでは、城壁の上に長い長いバトルメントが出てくる。西洋の城のデザインですね。全てCGなのだけれど、上からドローンで撮ったような場面はゲームの画面のようだと思った。ちょっと面白い。

● 日本の女の描写が進歩した?

「...women to pillow with you.」前回のくノ一アタックで怪我をしたジョンを見て医者が「緊張をほぐすのなら女がいるだろう」と言う。戸田鞠子(アンナ・サワイ)がそれをジョンに説明をする場面。それに答えてジョンが「こいつが黒魔術師じゃなかったらpimp/女衒だろうね」と言う。すると鞠子がはっとしたように「男性のコンパニオンのほうがいいですか?」と真顔で聞くのがおかしい。ああ衆道か。1600年当時の女性の鞠子さんにはそれが普通なのだな。なるほど笑。

このドラマはいかにも…なステレオタイプの日本女性の描写を避けているようにも見える。第2話でジョンがお風呂に入るように指示される場面があったので「あ~きたきた、またまた日本の風呂の場面、いつもそれ」などと思ったらジョンが断ってお風呂のシーンがなかった。ほっとした。

というのも…1990年ぐらいまでは「日本と言えば女性と風呂のシーン」がまかり通っていたのよ。いかにもなステレオタイプ。『ミスター・ベースボール』って知ってる? 昔から日本の女性と言えば、蝶々夫人…弱々しくおしとやかでかわいそうな日本の女、白人がやってくれば風呂に入れてくれる日本の女のイメージ。あ~いやだいやだ。このドラマではお風呂の場面がなかっただけでも時代は変わったんだなと思った。

おまけに第2話の最後は恐ろしいくノ一登場。いいですね~。日本の女をなめるな。日本の女にも虎や龍や蛇や荒馬がいることを忘れるべからず笑。




2024年3月5日火曜日

米ドラマ FX『将軍/Shōgun』(2024) 第2話 Servants of Two Masters :面白くなってきた



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『Shōgun』(2024) TV Mini Series
/米/Hulu, FX/カラー/55–70 minutes
Creators: Rachel Kondo, Justin Marks
Based on Shōgun by James Clavell
No. of episodes: 10話
Release: February 27, 2024 – April 23, 2024
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米国 FXにて。オリジナルの放送は2024年2月27日。


第2話を視聴。いい感じ。私の勝手な心配…このドラマはもしかしたら「ハリウッドによるエキゾティズム満載の珍妙中世ジャパン・ファンタジー」ではないか…の心配はなくなったかも。 (どのようなドラマでも)第1話/Pilot回というものが、いかに奇を衒って初見の観客を引きつけるための客寄せをしているのか…というのもよくわかった。第2話はずっと落ち着いている。

第2話はよくできた日本の時代劇。まるで日本の時代劇をものすごく贅沢にお金をかけて撮っているかのようだ。ほぼ違和感がない。出演なさっている俳優さん達も皆よく知られた日本の役者さん達で、台詞も日本語、場面はほとんどが屋内。第1回のような大掛かりな船のシーンもなし。普段から見慣れた時代劇のようにストーリーは進む。



★前知識ゼロで見たい方は少しネタバレ注意



史実を元にした内容が面白い

この回のメインは日本のトップの大名達がどのように派閥争いをしているかという内容。その派閥争いに(欧州から武器をもたらす)ポルトガルが関わっている。そしてまたその後ろにはもっと恐ろしいポルトガルの野心も見えてきた。そのような状況に迷い込んだ英国人ジョン・ブラックソーン。

歴史時代劇に慣れている日本人には馴染みやすい内容だと思う。第1話のように大掛かりなセットのシーンはないので驚きは少ないが、中身のあるドラマとして面白くなってきた。これがいい。すごくいい。(原作からのものだと思うが)人物達の力関係が描かれていて面白く、すでに続きが楽しみ。さてこれから関ケ原までどのような流れになるのか?


● ポルトガルの野望

英国人作家・ジェームズ・クラヴェルが1975年に書いた原作からの内容によるものだと思うが、ポルトガルの日本に対する野望が描かれているのが面白い。(史実でも)欧州ではローマの教皇の元、1494年のトルデシリャス条約によりスペインとポルトガルが世界を勝手に2分し、それにより日本はポルトガル領とみなされており、このドラマでもポルトガルがマカオをベースに日本の植民地化の準備を進めていることが描かれている。それをサポートする日本国内のキリシタン大名。カソリック教徒のポルトガル人+キリシタン大名にとって、その実状を知るプロテスタントの英国人航海士ブラックソーンは邪魔な存在。その辺りの話も面白い。


● 日本の文化の紹介

ドラマ全体では比較的穏やかなシーンが続くので、人々の所作やシーンの細かい部分がよく見える。例えば、石堂が部屋の真ん中で書に判を押すシーン。その直前に家臣がその準備をする様子が数秒だけ映る。部屋の真ん中には文机。家臣がその上に印を準備し、手前に茵(しとね・座布団)を置いた後で前面を両手でさっと撫でて整えるシーン。はっとする。ほんの数秒のシーンなのにそのような細かいところまでカメラで捉えて映している。短いシーンでも日本の細やかな文化を映して紹介しているのだと思い感心した。


● 日本人の出演者

落葉の方(二階堂ふみ)が登場。このお方の冷たさが最高にいい。二階堂さんは以前お若い時にNHKの『軍師官兵衛』で淀殿をなさっている。あの気性の激しい淀殿はよく記憶している。当時二階堂さんは20歳ぐらいだったのに堂々としていてすごい女優さんだと思った。今回また淀殿=落葉の方をなさることになった。この落ち葉の方もキツイ女性ですね。強そう。いい。すごくいい。楽しみ。

日本の俳優さん達は皆安心して拝見できる。今のところこのドラマで妙なアクセントの日本語は聞こえてこない。それにしてもすごいですね…ハリウッドの作品なのに日本人の役が全員日本の役者さん達なのだろうか。それだけでもものすごいachievementだと思う。真田さんのおかげなのだろう。感謝。


● 真田広之さん

最後のくノ一アタック・シーン。真田さんが刀を持つ。かっこいい。真田さんは別格だ。真田さんは刀を持った途端に超人になる。本当にかっこいい。真田さんは刀を振らなくても、ただ刀を手に持っただけでキマる。空気が違う。そのことがよくわかった。そして刀をさっと動かせばもう相手が斬れている。全てがあまりにも美しい。かっこいいわ~💕 これからもソードマスター真田が見られるのかしら。


これからも楽しみです。


米ドラマ FX『将軍/Shōgun』(2024) 第3話 Tomorrow is Tomorrow :ハリウッド・スケールの活劇の回
米ドラマ FX『将軍/Shōgun』(2024) 第2話 Servants of Two Masters :面白くなってきた
米ドラマ FX『将軍/Shōgun』(2024) Pilot第1話 :これから楽しみです



2024年2月4日日曜日

米ドラマ FX『フュード/確執/Feud: Capote vs. The Swans』(2024) Feud シーズン2:Pilot第1話 カポーティのもうひとつの顔







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『Feud: Capote vs. The Swans』 (2024)
TV Series/米/カラー
/1話45分・全8話/
作:Ryan Murphy, Jaffe Cohen, and Michael Zam
監督:Gus Van Sant, Max Winkler, and Jennifer Lynch
脚本:Jon Robin Baitz』
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先週1月31日に米国 FXにて放送開始のドラマ。第1話を早速視聴。これはまたまた面白そうなドラマ。


作はライアン・マーフィー氏。このお方は本当に忙しいお方だ。とにかく多作。毎年のように新作が出てくる。

彼の作品群…2003年に『NIP/TUCK』がヒットし、2009年は『Glee』、その後2011からは『American Horror Story』のシリーズを開始、また2016年には『American Crime Story』シリーズ、2017年に『Feud』のシーズン1、2018年には『Pose』シリーズ…などなどとにかく話題作ばかりリリース。私は彼の作品の全てを見ているわけではないのだけれど、とにかくアメリカのエンタメ界隈では彼の名前がよく聞こえてくる。


今回2024年1月に放送開始の『Feud: Capote vs. The Swans』は、2017年の同シリーズ『FEUD: BETTE AND JOAN』『Feud』シリーズのシーズン2。

前回の『FEUD: BETTE AND JOAN』では、1960年代のハリウッド大女優・ベティ・デイヴィス(スーザン・サランドン)とジョーン・クロフォード(ジェシカ・ラング)の確執を描いた。このドラマはリリース時に見たのだけれど感想を書きそびれた。私はジェシカ・ラングのファンでこのドラマも楽しく見たと思うのだが、感想を書かなかったものだから内容をあまり覚えていない。

テーマが実在の有名人の「バトル/戦い」の話なので感想を書き辛かったのかもしれない。結局は有名人のゴシップ系の話だし。それまで知らなかったことを「ほ~そうかそうか すごいね」と眺めただけだったのかも。

ともかく今回はテーマに興味があるので、ドラマのお終いまで待たずに第1話の印象と、個人的に思うところを書いておこう。


今回の話は、米国の作家トルーマン・カポーティと、彼のニューヨーク上流社会の女友達…彼女達のニックネームは白鳥達(The Swans)…との確執。カポーティが1975年にエスクワイア誌に書いた…The Swans(白鳥達)に関するゴシップを元にした暴露小説『La Côte Basque 1965』により始まった彼と女性達との確執を描く。ちなみに『La Côte Basque 1965』は後にカポーティの未完の遺作『Answered Prayers』として出版された。


ドラマに登場する上流階級の女性達は…

★ Babe Paley (Naomi Watts ナオミ・ワッツ)
マサチューセッツ州ボストン出身。著名な神経外科医の娘で社交界の華。ヴォーグ誌の元編集者。米テレビネットワークCBSの創設者 Bill Parey の妻、完璧な美貌とスタイルでThe Swansのリーダー。

★ Slim Keith (Diane Lane ダイアン・レイン)
カリフォルニア出身の元モデル。映画監督Howard HawksとプロデューサーLeland Haywardと結婚し離婚の後、英国人の銀行家Lord Kenneth Keithと結婚。レディのタイトルを得る。

★ C.Z. Guest (Chloë Sevigny クロエ・セヴィニー)
マサチューセッツ州ボストン出身。英国首相チャーチルのまたいとこでポロ選手のWinston Frederick Churchill Guestの妻。ブロンドの美貌で芸術/文化系の有名人との繋がり多数。

★ Lee Radziwell (Calista Flockhart キャリスタ・フロックハート)

元大統領夫人Jacqueline Kennedy Onassisの妹。国際的な社交家。

★Ann Woodward (Demi Moore デミ・ムーア)
カンサス州出身の元ショーガール、モデル。社交家。後にニューヨークの銀行the Hanover Bankの跡取りWilliam Woodward Jr.と結婚。

★Joanne Carson (Molly Ringwald モリ―・リングウォルド)
カリフォルニア州ロサンゼルス出身。トークショー・ホストJohnny Carsonの元妻。友人として最後までカポーティを支える。


第1話は、カポーティの『La Côte Basque 1965』がエスクワイア誌に載り、Babe PaleyとAnn Woodwardのプライバシーが暴露されたことから、Slim Keith がPaleyに「カポーティに仕返しをしよう」と焚きつける場面で終了。ゴングが鳴って戦闘開始。


所謂ゴシップ系の実話を元にしたドラマで、いかにも西洋のファッション誌などに「ニューヨーク上流社交界の歴史」として載りそうな話。その中身も確かに面白いだろうけれど、しかしアラ還の私の世代にはそれ以上にもっと注目する目玉がある…出演している女優さん達の顔ぶれがすごい。

モリ―・リングウォルド?ぇえええ?久しぶりだ。第1話に出てきたデミ・ムーアって何歳だっけ?61歳?信じられない。うそみたいにすごく若くて綺麗。。ダイアン・レインも綺麗だけれどずいぶんおばさんになったものだ。彼女は若い頃は可愛かったのよ。キャリスタ・フロックハートって『アリー my Love』だ。彼女も久しぶり。もうこれらのメンバーだけでも見たいと思う。皆さん同世代で…みんなお綺麗ですね。ひ~

女優さん達の顔ぶれだけでも興味をひかれる。その上にライアン・マーフィーなら、見ますよそりゃ。見ます見ます。


さてそれらの女優さん達への興味は置いといて、私にとってもっと興味深いのは作家トルーマン・カポーティ。

私は大昔に彼の小説が好きだった時期がある。おそらく多くの映画ファンがそうであるように、私も『ティファニーで朝食を/Breakfast at Tiffany's 』と見てから小説を読んだ。ホリー・ゴライトリーの自由な心と孤独に魅了された。

そしてまた当時文庫本で出ていた小説もいくつか読んだ。その中で好きだったのは『遠い声・遠い部屋/Other Voices, Other Rooms』それから『クリスマスの思い出/A Christmas Memory』。どちらもカポーティの初期の作品で彼の子供時代の思い出を元にしているそうだ。

その両作品の登場人物達に向けられた作家カポーティの温かく優しい目線に彼の心の細やかさを感じて、私はカポーティという人は繊細で優しい人なのだろうと思い込んだ。

ずっと後に『冷血』に挑戦するものの挫折。ただ内容に入り込めなかったのが理由。文庫本は文字も小さい。今回写真を撮ろうと思って本棚を探したら、この小説の文庫を2冊持っていたことに今気づいた。何度か読もうとはしたらしい笑。



  
それから20代のバブルの頃、ファッション誌・マリ・クレール誌やエル誌などで西洋の社交界の話の記事などをよく見かけていたので、この「カポーティとThe Swansの話」も、おそらく当時少しは読んだのではないかと思うがあまり記憶していない。それらのゴシップ記事を読んでも、私の中のカポーティの「繊細な優しい人」のイメージは変わらなかった…いや自分で変えようとしなかった。好きな作家のイメージを自分の心の中に保ちたかったのだろうと思う。


そんなわけで私はカポーティに少なからず愛着がある。『冷血』は読んでいないけれど(そういえばフィリップ・シーモア・ホフマン主演の映画は見た)、しかしそろそろ彼のもう一つの顔…ハイソサイエティに出入りして各界の有名人たちと派手な交流を楽しみ、お喋りでゴシップ好きで毒を吐くカポーティ…のことをもう少し知るべきなのだろうと今は思う。その意味でもこのドラマには期待している。


カポーティを演じるのは Tom Hollander。声や印象がそっくり。

脚本はJon Robin Baitz。台詞が早くて固有名詞がどんどん出てくるので内容を1度で全て理解するのは大変。キャラクターたちの会話の内容もジョークもリファレンスが様々なところから出てくるので追いつくのも大変。チャレンジ。もちろんセットや衣装も豪華。旦那Aによると配役も役者達の演技もセットも脚本も描かれた時代の雰囲気も大変よくできたドラマだとのこと。


そういえば1話で、ダイアン・レインかナオミ・ワッツのキャラクターがカポーティのことを「宮廷の道化師/court jester」と呼んでいた。ひどい。それからカポーティが La Côte Basque  に連れてきた若いボーイフレンド兼マネージャーJohn O'Sheaに対する女性達の冷たさ辛辣さと言ったら…ひ~震えるほど怖い怖い。なぜハイ・ソサエティの方々はあれほど性格がきっついのだろうか?ほんとに恐ろしいわ。

なぜカポーティは彼女達と親しく交流しようとしたのだろう???


ともかくライアン・マーフィーですからね。期待しましょう。


※追記
今『遠い声・遠い部屋』のネット上の人々の感想を読んでみたのだけれど、私の思った印象とは違う感想を持った人も多いみたいだ。この本を読んだのは私が若い頃でずいぶん前なので詳しくは覚えていないのだけれど、読んでいて「この話がとても好きだ」と思った記憶がある。もう1回読み直してみようかと思う。


2024年1月24日水曜日

英ドラマ Netflix 『ザ・クラウン/The Crown』(2016 - 2023) 全シーズン:感無量 お疲れ様でした 大きな拍手






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『The Crown』(2016-2023) TV Series
/英・米/Netflix/カラー/39–72 分
Creators: Peter Morgan
No. of seasons: 6シーズン
No. of episodes: 60話
Release: 4 November 2016 – 14 December 2023
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怠け癖がついてなかなか文が書けない。風邪はなんとかおさまった。もう咳はほぼ出ない。どういうわけか体温が午後に37度になることもあるが風邪によるものでもないかもしれぬ。PCに向かって文章を書かなければ、普段からやり残していた家の仕事がいくらでも目に入る。これもやらなきゃあれもやらなきゃ、あ、でも熱があるから今日は休もう…などと言っている間に1月ももうすぐ終わりだ。そろそろ趣味の感想文を書きを始めなければ。



さて去年の年末に見終わったNetflixによる英国のドラマ『The Crown』。とうとう終わってしまった。英国王室を描いたこのドラマ・シリーズのスタートは2016年。ワンシーズン10話を数年毎に続けて、去年の年末に6シーズン目、全60話で完了した。とうとう終わってしまった。感無量。


ドラマの開始は1947年…英国王女エリザベスがフィリップ・マウントバッテン/エディンバラ公と結婚した頃からドラマはスタート。父・ジョージ6世の後を継いで王女は、1952年にエリザベス2世として戴冠し英国の女王となる。そしてそれから6シーズン60話を経て時代は2005年頃、女王が80歳になる頃を描き完結する。

なんと大きなプロジェクトであったことか。

この製作チームはこのとてつもない大河ドラマをとうとう完成させた。一度も力を抜くことなく、王室へ敬意を払いながら、様々な歴史的エピソードを再構築、実在する人物達の個々のエピソードを取り上げて再現し、(フィクションではありながらも)それらの人物達の心の中を覗くような脚本で多くの観客が納得するストーリーを描き上げた。お見事。これほどの作品が現実に制作されたことにまず驚く。ものすごい大作。ものすごい力技。このような大掛かりなドラマはもう2度と見ることはないだろうと思う。


人物たちが全て実在する王室の方々であることから、このドラマがゴシップ的な再現ドラマであることは事実。しかしまた同時に、この英国王室の50年以上を描いたドラマは、英国の20世紀の現代史のドラマでもあった。エリザベス2世の一生は英国が歩んだ歴史でもあった。

「国を描くのであれば、まず国民を納得させる」

このプロジェクトは最初からNetflixにより全世界に配信されることが前提で製作されたのだろうが、まず製作が心を砕いたのは英国国民にこのドラマをどう納得させられるかということだったのではないかと思う。ドラマのテーマは英国の現代史。今でもロイヤリストの多い英国国民をまず納得させなければ、彼らの愛する王室とエリザベス女王を描くこのドラマ・シリーズはおそらく成り立たなかっただろうと思われる。

結果は成功だったのだろうと思う。シーズン6のダイアナ妃をめぐるエピソードは賛否両論だったらしいが、それでも6シーズンに及んだこのシリーズ全体を悪く言う人はあまりいないのではないか。


視聴者の記憶に残る過去50余年の時代を再構築し実在の人物達を描くドラマが、製作にとっていかに難しいチャレンジであったのかは想像を絶する。視聴者それぞれに思い入れや記憶のある現代を描くドラマだからこそ視聴者はドラマに魅了される。その内容にゴシップ的な意味もあれば、人々はますますドラマに夢中になる。

例えば現在80歳の英国人がこのドラマを見れば、ほぼ全編が彼らの記憶に残る馴染みのあるストーリーだろうし、また1980年生まれの人であれば、シーズン6の時代は彼らのティーンから20代半ばの時代の再現になる。そのようなドラマに人々が魅了されないわけがない。しかしそれだけ視聴者を惹きつけるのであれば、もちろん批判や批評も多くなるだろうことは予想される。製作は心を砕いて「いい作品」を目指したのだろうと思う。

そして堂々60話の大河ドラマが完成した。もうそれだけで大きな拍手。とにかくものすごい力技。



まずシーズン1と2が特に素晴らしかった。主演のクレア・フォイさんがエリザベス女王に見えた。小柄。白い肌。濃い色の髪。大きな青い目。歯切れのいい口調。ユーモアを湛えた眼差し。エリザベス女王の若い頃の映像は今も残っていて私達も見ることができるが、このクレア・フォイさんは若いエリザベス女王として納得の配役だった。美しい若い女王の佇まいが完璧だった。

印象にのこっているのは戴冠式の回/第5話。夫のエジンバラ公が戴冠式で、妻/女王の前に跪くのを嫌だと言う「ただ妻の側に立っているだけではいけないのか?」 (自らがアイデアを出した)テレビ放送で全世界にその姿(夫の自分が妻に跪く姿)が放映されるのを恥ずかしいと思ったのだろうか。しかし女王は夫のわがままを許さない。戴冠式は予定通り厳かに行われ、全世界の見守る中、エジンバラ公は女王に跪き忠誠を誓う。

小柄な若い女性の肩に、ほぼ千年に及ぶ王家の歴史とそれを守る責任がのしかかる。その姿にエジンバラ公も圧倒されたのだろう。その場面に私は言いようもないほど感動した。今回そのシーンを見直したがまた涙が出そうになった。そのシーンだけでもこのドラマが作られた意味があると思うほどだ。名場面。クレア・フォイさんが女王を演じたのはシーズン2まで。


女王が中年になったシーズン3と4で女王を演じたのはオリビア・コールマンさん。このキャスティングは大きな間違いだとすぐに私は思った。あまりにも女王御本人と違い過ぎるルックスと声、佇まい。このオリビア・コールマンさんは最悪のミスキャストだと思った。

なぜ茶色い目の女優さんを女王にキャスティングしたのだろう。せめて青いコンタクトレンズはできなかったのか。声が特にいけない。早口過ぎるし響きも悪い。姿勢も悪い。高貴な印象がない。あまりにも雰囲気が違い過ぎる。オリビア・コールマンさんのイメージは親しみのあるユーモラスな下町のおばさん風。女優さんに問題があるわけではない。完全にキャスティングのミス。威厳に満ちて高貴で硬質でいながらウィットに富み歯切れのいい口調のエリザベス女王とは似ても似つかない。全く許しがたい。オリビア・コールマンさんは撮影当時非常によく売れていたので、その人気からキャスティングされたのではないかと思うが、どう見てもミスキャスト。

それでもエピソードが進むにつれて コールマンさんもそれらしく化けていたのですごいものだとも思った。他のキャスティングは相変わらず素晴らしい。アン王女もダイアナ妃も似ている。さずがにサッチャー総理をジリアン・アンダーソンさん、マーガレット王女をヘレナ・ボナム・カーターさんが演っているのは妙だと思った。


そしてシーズン5と6。女王を演じるのはイメルダ・スタウントンさん。威厳に満ちてお堅い女王の雰囲気はいい感じだ。多少重苦しくユーモアに欠ける感じなのは、彼女の演じた時代が王家にとっての危機の時代だったからだろうか。

ダイアナ妃を演じたエリザベス・デビッキさんは驚くほど似ている。ドディ・アルファイドのカーリッド・アブダラさんもよく似ている。ジョン・メイジャー首相もカミラ王妃もよく似ているが、プリンス・チャールズ/チャールズ3世はあまり似ていなかった(いい役者さんだけれど)。

そのように、ついついゴシップ的に誰が誰に似ている、似ていないというのもこのドラマの楽しみでもあった。特に私にとって英国に暮らした頃のシーズン5と6の頃は、当時の記憶をたどりながら見るのもとても楽しかった。


(女王の老年を描いた)シーズン6の最終エピソードは、2022年の女王の崩御の後に脚本が書き換えられたらしいということを後で聞いた。女王が80歳の誕生日を前に、彼女の国葬の計画を立てる話が描かれ、実際の葬儀の最後にバグパイプで奏でられた曲「Sleep, Dearie, Sleep」が選ばれた様子も描かれる。

ドラマはもちろんフィクションで脚本も創作であることはわかっているが、エディンバラ公が王室についてのシビアな現実を「このシステムは外の人々にとっても我々内にとっても意味をなさなくなった。人間に関するものは全て朽ちるものだ。その運命が来たら君主も従わなければならないだろう。We're a dying breed, you and I. 」と女王に話していたのが印象的だった。

いやいや…、私は古からの歴史との繋がりを今も守り続けるその「システム」をこれからも大切に残していって欲しいと思います。心から願います。

本当にいいドラマでした。
またシーズン1を見直そうかと思う。


(以前から度々ここにも書いてきた)私がエリザベス2世を尊敬しているという話。それはなぜか? 「文化的な遺産」という意味で、誰が君主であっても王室は大切なものだと私は思うけれど、しかしなぜ私はエリザベス女王を特に尊敬しているのか‽ 

それは彼女が先祖から与えられたとてつもなく大きな「義務」を、一生をかけて文句を言わずに完璧に成し遂げたからだ。祖先から与えられた「義務/責任/役目/務め」を一生をかけて律儀に守り続けたからだと思う。

人間とは誰でも何らかの「義務」と共に生きなければならないもの。それならば常に文句を言いながら「義務」を行うのか、それとも自らの置かれた立場や状況を受け入れて「義務」を全うするのか…人の生き方としてどちらが正しいのか? …女王の長い人生を考えるたびにそのようなことを私は思う。それが私が彼女を尊敬する理由なのだろうと思う。



2023年11月28日火曜日

英ドラマ Netflix 『ザ・クラウン/The Crown』(2023) シーズン6, Volume 1 :制作チームの配慮と思慮深さに感嘆





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『The Crown』(2016-2023) TV Series – Season 6 Volume 1. 
/英/Netflix/カラー/約58分
Creators: Peter Morgan
Season 6 Volume 1 (Episode 51, 52, 53, 54)
US Release Date: November 16, 2023
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このドラマはリリース初年の2016年から見始めた。毎年楽しみに鑑賞を続けてきた。シーズン1、シーズン2と見ながらもつい感想を書きそびれたので(いつものことだが思い入れのありすぎる作品は感想が難しい)、「それなら全部が終わってから書けばいいか」と個々のシーズンの感想を書くのは諦めた。全シーズンをコンプリートしてからにしようと思っていた。


さて今シーズン6は、エリザベスII世と英国の王家を描いたこの大河ドラマシリーズの最終章。いよいよ私がロンドンに住んでいた頃の話となった。当時の空気はよく覚えているのでドラマへの興味はますます募る。先日サンクスギビングの夜にシーズン6がリリースされたことを知り夫婦で鑑賞開始。そのまま週末に現在リリースされているVolume 1 (第51, 52, 53, 54話) を見終わった。

感無量。これは何か書いておきたいと思った。当時メディアで見ていた王室の話が、そのまま再現ドラマになっている。もちろん脚本家Peter Morgan氏による創作も多いのだろうけれど、それにしてもなんと上手いドラマの作り方だろうかと驚いた。


シーズン6のVolume 1とは、先にリリースされたシーズン6の前半の4話。ダイアナ元妃の事故の前の2か月とその後を描いたもの。来月12月には第5話から最終話までがリリースされる予定になっている。

感想を書く前にまず私のスタンスを書いておこう。私はダイアナ元妃のファンではない。それからダイアナ元妃に関するゴシップにもそれほど興味を持っていたわけでもない。現チャールズ国王をことさら咎める気持ちもない。重要なのは英国の王室の歴史と伝統と遺産。そしてそれを守り続けてきたエリザベス女王は尊敬している。


1997年に、ダイアナ元妃と当時恋人とされたドディ・アルファイド氏が共に亡くなった自動車事故は、時代を動かすほどの大事件だった。英国国民のみならず世界中が大きなショックを受けた。特に当時を知る者にとってあの事件は、皆それぞれに独自の記憶や思い入れがあるほどの大きな事件。だからこそドラマ化することは難しいはず。全ての視聴者を納得させるのはほぼ無理だろう。だからこの『The Crown』シリーズが、あの事件をどのように脚色しドラマ化するかには特に興味があった。いったいあの「事件」をどのように作れば人々からの批判や非難を最小限に抑えることができるのか?と心配した。

しかしドラマを見てその心配はなくなった。ストーリーテリングの巧みさに感嘆する。さすが英国。なんという知性。このドラマのプロダクションのチームとPeter Morgan氏に敬意を表したい。この事件のドラマ化では、今後これ以上のものはほぼ望めないだろうと私は思った。



★ネタバレ注意


これだけショッキングで大きな事件、またその事件が非常にセンシティブな内容であるにも関わらず、ドラマの制作チームが、感情に飲まれ過ぎることなく、センセーショナリズムに走ることもなく節度を保ち、登場人物達へ最大の敬意を持って作品化に望んだ様子が伺えた…まずそのことに驚いた。(フィクションが多いであろうアルファイド親子の描写には疑問が残らないでもないけれど)それでも父モハメド氏の…王室からの拒絶に嘆くシーンでは彼の苦悩を描き、また息子を失った父親の哀しみも十分に描いていると私は受け取った。

さすが英国人が脚本を書いて、英国人の制作チームが作ったドラマ。英国人の愛する英国王室の話を、王室に対する敬意と共に、(特に)英国の国民に向けて、出来る限り誰も非難せず、最大の思慮深さと配慮を持ってこの「事件」を丁寧に再構築したこのドラマの質に感嘆する。なかなかできることではない。



1997年当時、ダイアナ元妃は人気の絶頂。その状況は…彼女がただの人気者だという以上に、とにかく全メディアを巻き込んで毎日英国中を「お騒がせ」し続けるというもの。彼女は文字通り「時の人」。時を騒がせていた人。

ダイアナ元妃は、ティーンの頃からフェアリーテイルのプリンセスとしてメディアに登場。20歳で王室に嫁ぐ。綺麗でスタイルもいいからファッション・アイコンになるのも自然なこと。そのプリンセスはすぐに絵にかいたように若く美しい母親になる。それにもかかわらず数年後に彼女の結婚は破綻。夫に一方的に裏切られた被害者の妻…かと思えば御本人もちゃっかり恋人を作っていた噂。メディアに煽られて夫婦ともに世間をひっくり返すほどの大騒動。晴れて離婚が成立(未来の国王の離婚そのものが大変な事件)。その後、彼女は自らのスター・パワーを使ってエイズ問題や地雷除去問題など慈善活動への取り組みを本格化。彼女が動けば世の中が動くように思えた。そしてイスラム教徒の恋人(英国にとってはいわくつきの大富豪の息子)との夏のバカンス。保守派は眉をひそめたが、メディアは我も我もとスクープ記事を掲載。それを英国国民全員が日々うんざりしながらも飽きずに消費する。当時ダイアナ元妃の顔が英国のメディアに登場しない日はなかった。そんな時に事故は起こった。

世の中が止まった。

そのような「事件」をドラマ化するのがどれほど大変なことかは想像を絶する。このドラマ化の成功の理由は…全ては制作側の知性。描く対象に対する揺らぐことのない敬意だろう。



主な登場人物は、ダイアナ元妃、ドディ・アルファイド氏とその父・モハメド・アルファイド氏、そして当時のチャールズ皇太子、二人の王子達、エリザベス女王、エディンバラ公フィリップ王配を始めとする王家の人々。

Volume 1・最初の3話は、王室を出てなお人気爆発中のお騒がせダイアナ元妃とドディ・アルファイド氏との関係。ドディ氏の後ろには父親のモハメド氏。彼は英国上流階級への野心を持つ大富豪で、息子を野心達成の駒に使おうとしていた。そして起こった交通事故。二人は死去。その事故の様子はこのドラマでは一切描かれない。

第4話で描かれるのはその後の王家の人々の様子。事故がどのように王室を動かしたのか。…皇太子と離婚し王室にとっては「外」の存在となったダイアナ元妃の死を、女王と王家のシニアのメンバーは「外」の事件として扱おうとする…それは王室の規範であった。また当時王家はスコットランドで夏の休暇中。王室は沈黙した。 しかし彼らの冷たい姿勢に国民の怒りが爆発。新聞は「Show us you care, Ma’am/国民にお心を見せてください女王様」を見出しに打つ。人々もメディアも王家に抗議し始める。その様子を見て女王は(ドラマでは)「革命のようだ」と嘆く。

それに対し(王室の若い世代の)チャールズ皇太子が「王室の変化の必要性」を女王に迫る「もう今までのように王家をプライベートな存在にはできない」。チャールズ皇太子の台詞「ダイアナは人々が必要とするものを国民に与えていた。彼女は、どんなに美しく特権をもつ存在であっても痛みや哀しみは皆と同じだと証明した。人々はだからこそ彼女を愛した」「王室はもっと国民の気持ちに寄り添わなければならない」と皇太子は母親に説く。その後王家の人々はロンドンへ帰り、女王はTV放送で国民に向かい「ダイアナに個人として哀悼の意を捧げる」とスピーチする。王室が国民の要求に対して折れた瞬間だった。



第4話に出てくるダイアナ元妃とドディ氏の姿は多くの視聴者を困惑させるのではないかと思うが、脚本家の意図は、おそらく(二人に会う)人々の心の中の自問自答、それにより彼らが自らを癒し、答えを導き出す様子を具体化させたものだろうと私は受け取った。ドディ氏の父親も、チャールズ皇太子も、女王も、皆それぞれが思いを巡らす様子を描いたのだろう。巧みな脚本だと思う。

ダイアナ元妃は女王に「王室の規範を超えて国民に個人としての心を示す」ことを囁く。「誰もが覚えている限り、あなたは国民に英国人であることの意味を教えてくださった。たぶんあなたも(新しいことを)学ぶつもりだと示す時がきたのかもしれません」これは女王が自問した言葉だと読むこともできる。

チャールズ皇太子はダイアナ元妃に向かい「後悔している」と涙を流す。ダイアナ元妃は「(あなたの涙を)受け取って持っていくわ」と告げる。二人は和解する。

ドディ氏の父親モハメド・アルファイド氏は、息子に向かい「君はパーフェクトな息子だ」と告げる。息子ドディ氏は「もう西洋に憧れ過ぎるのはやめたほうがいい」と父親の野心を窘める。

そのように皆それぞれが(亡くなった者の助けにより)自ら答えに至る様子が描かれる。創作による脚色だが、脚本家が心を砕いて脚色をしていることが伺える。これほどセンシティブな内容で…もし語り口を間違えば(今まで5シーズンも継続して高いクオリティを保ってきた)この王家の大河ドラマを台無しにさえしかねない…大変難しいプロジェクトだったと思うが、この制作チームは見事に人々の心に迫るドラマを作り上げたと私は思う。



(前述のように)実際の事件のインパクトがあまりにも大きかったからだろう、このドラマに対する意見は様々なようだ。プロの批評家のスコアを集めたRotten TomatoesこのSeason 6, Volume 1の平均スコアはなんと55/100点。なんと厳しい。

興味があっていくつか読んでみたけれど、理由は様々
・ダイアナ元妃の再現ドラマになり過ぎている
・全てがメロドラマ風
・人の哀しみを題材にシーンを撮る不謹慎さ
・創作された台詞だけで難しい話を構築する趣味の悪さ
・王室メンバーを良く描きすぎ
・事実から棘を抜いて綺麗な話に脚色しすぎている
・幽霊の演出が安っぽく馬鹿馬鹿しい
・アルファイド氏の野心に必要以上に焦点が当てられている
・人種差別的である
など他にもあったか…

要はあの「事件」は皆それぞれ思い入れのある題材なので、それぞれが「これは違う」「これは悪趣味」「これは不謹慎だ」と文句を言っている様子。それだけ難しい題材だったということだろう。



現在の英国は…、去年エリザベス女王が崩御され皇太子はチャールズIII世として国王となられた。彼の側にはカミラ王妃。彼女も国民に受け入れられている。ウィリアム皇太子には子供達もいて未来へ王家が続いていくことも明らか。ヘンリー王子は少しお騒がせのようだが、今のところ英国王室の土台が揺らぐことはなさそうだ。

そんな今になって、またあの「大事件」を呼び覚ます危険性。それは誰もが心配したはずだ。しかしこの制作チームは不必要に寝た子を起こすことなく、思慮深い脚本で登場人物達への敬意、また現在の王室への配慮も忘れることなく、驚くほど巧みなキャスティング、心に迫るそれぞれの俳優達の演技、美しく効果的な演出で、あのセンシティブな「事件」のドラマ化を成功させた(たとえそれがセンチメンタルなメロドラマ風であったとしても)。あくまでも私の個人的な意見だけれど、あの事件のドラマ化としてこれ以上のものはほぼ不可能だろうと思うほどの成功だと思う。



当時の思い出を書いておこう。1997年の8月31日のその日、私はドイツのミュンヘンにいた。30日にロンドンを発ちミュンヘンに着いて1泊し翌朝テレビでそのニュースを知った。翌1日にドイツの南東Berchtesgadenに移動。それから2週間かけてドイツ南部を車で旅した。英国に帰ってきたのは14日。そんなわけで(上では知ったようなことを書いているが)あの時私はロンドンにはいなかった。

ニュースは毎夜テレビで追った。ドイツ各地を回った旅だったので泊ったホテルによってはドイツ語のニュースしかなく閉口した。当時はスマホもタブレットも無く情報はテレビか新聞。それでもかなりの情報は見ることはできたのだろうと思う。当時のメディアの記事を今でも覚えているのは、ドイツ国内を観光で回りながらも毎夜ニュースを見て、度々英字新聞を買って読んでいたからだろう。イギリスの人々の王室に対する不満も聞こえてきたし「Show us you care, Ma’am」のヘッドラインもどこかで見た。そして6日の葬儀はMittenwaldのホテルのテレビで見た。

14日にロンドンに帰ってきて、翌日15日には一人でケンジントン宮殿に様子を見に出かけた。野次馬だ。葬儀は9日前の9月6日だったにもかかわらず、宮殿のフェンスの中にはまだ枯れて集められた大量の花束が山になって積まれているのに驚いた。遠い昔の記憶だ。


2023年10月13日金曜日

英ドラマ FX『ブリーダーズ 最愛で憎い宝物/Breeders』(2023) シーズン4:とうとう孫だ!家族の物語は続いていく






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『Breeders』(2020-) TV Series – Season 4/英 ・米
/カラー/約30分 ・全10話
Creators: Chris Addison, Simon Blackwell, Martin Freeman
Season 4 US Release Date: July 31, 2023
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『ブリーダーズ 最愛で憎い宝物/Breeders』のシーズン4。米国FXでの放送は2023年7月31日から9月25日まで。全10話。


とうとう『ブリーダーズ』が終わってしまった。ああ名残惜しい。このドラマシリーズのWorsleys家の子育て物語はこのシーズンで終了だそうです。


このドラマは面白かった。
● シーズン1は30代の夫婦と二人の小さな子供達の話…子育てのドタバタのコメディ。
● そしてシーズン2と3は(シーズン1から)6年後の家族の様子。子供達はルークが13歳でヱヴァが10歳。子供の思春期と両親の仕事や身体の変化が重なった状況を2シーズンをかけてリアルに描いた。
● そして今回のシーズン4は(シーズン3から)5年後。ルークは18歳、ヱヴァは15歳ぐらいか。そしてシーズン4は(トレイラーにもある通り)主人公の夫婦の長男・ルークがお父さんになる。びっくり。


このドラマのシリーズがシーズン4で終わることは最初から決まっていたそう。制作のスタッフは、Worsleys家のストーリーの最終章に何を持ってくるのかの問いに答えて、おそらく(英国的なブラック・ユーモアに満ちた)タイトル『Breeders/ブリーダーズ/繁殖家』の意味に立ち返ろうとしたのだろうと思った。ポールとアリーが(ブリーダーとして)子供を育てあげた後、今度は彼らの息子が父親になる/ブリーダーになる…家族のストーリーが継続していくことを想像させる終わり方にしたのだろう。


しかしそれにしても高校を卒業したばかりで職もないのに子供とは…早すぎる。

実は一番違和感があったのはそこ。ルーク君は子供の頃から感受性が強く神経質で…、幼い頃には細かいことを気にして眠れなかったり、また思春期には父親の荒い気性に苦悩するような「繊細/細かい/細部にこだわるタイプ」の男の子だったのだけれど、そんな人が将来も考えずについうっかり子供を作ってしまうのか?どうもルーク君らしくないではないか?と思った。 それでもドラマとしてはうまくまとまったのでいい。そういうこともあるのかもしれぬ。


私はシーズン3の感想で、このドラマは夫婦の子育てのドタバタコメディから「Worsleys家の家族の物語」になったと書いた。今回のシーズン4もその流れで緩やかに最終話を迎えた。Worsleys家の家族の時計はドラマが終わっても進んでいく。ランダムな問題に触れながらもそれらを完結させることなく、彼らの日常はこれからも同じように続いていくのだろうと将来を想像させながらドラマは終了した。いい気持ちで見終わることが出来た。余韻が残る。

だからロスがかなりありますね。え~これで終わりなのか~…。


あ…そうだ。なぜこのドラマがこんなに私の心に刺さるのか?それはこれが(ニューヨークでもパリでも東京、シカゴでもない)ロンドンの話だからだ。馴染みのあるアクセントや人々の気質を思い出し、理屈っぽいポールと強気なアリーを見ながら「もし私達が今もロンドンに住んでいたとしたら…」と思わずにはいられない。私が30代を過ごした10年間の、あのロンドンでの暮らしの延長線上の(実現しなかった/想像上の)展開がこのドラマの中に見える。懐かしさと迷いとが心の中に行き来する。だからこのドラマは私にとって特別なのだ。そうなのだ。
I could have been there. It could have been…or I wished to have been..., even I knew it’s not true.


この家族が本当に好きになった。なんだか友人の夫婦を見ているような気分になった。ポールやアリーの正直過ぎるほどのあけすけな様子も、口の悪さも気の短さも激しさも面白かった。家族とはああいうものだよね。そりゃー子供にキレることもあるよね。あるある。そして子供たちが思春期の頃の話では考えさせられた。「もし私達夫婦に子供がいたら、どうしていただろう」と沢山の疑問を頭に浮かべた。子供を持たなかったことへの後悔と(ある意味)安堵と、そして空虚と、人生へ疑問と、様々な思いが心の中を行き来した。このドラマはず~っと私の心に残るものになると思う。いいドラマだった。



★ネタバレ注意


このシーズン4は(前シーズンから)5年後。 最初はアリーとポールが離婚しそうなのに、ルークのニュースで全てがひっくり返る。彼ら夫婦はまだ50歳前後で若い。彼らの戸惑いは理解できる。

ルークのパパになることへの期待と恐れ。そしてルークには進学の話も絡んでくるから状況は複雑だ。ポールとアリーはタッグを組んでルークを助けようと協力し合う。その間に二人の仲はしっかりと固まる。

そしてある日ポールは(中年になった)今の時点での自分の人生を振り返り「これも悪くない」と納得する。アリーは家族に温かい愛を見出す。またヱヴァは新しい恋に目覚める…それが恋なのか憧れなのか…曖昧な彼女の心も繊細に描かれる。

そして新しい命が誕生する。ルークの戸惑いと恐れにポールが寄り添う姿が心に沁みる。第3話のポールからルークへの言葉、そして第8話でポールがルークに優しく寄り添う様子には涙が出そうになった。いつもイライラして怒鳴るばかりだったポールが、戸惑うルークに(人生の先輩として)優しく寄り添っている。

第9話と10話ではポールの両親ジャッキーとジムの老いが描かれる。彼らも戸惑いながら迫りくる老いに向かい合う。そして両親を支えることを誓うポール。両親と自分と子供と孫…家族はこれからも共に道を歩んでいく。

そして最後に本当の愛に気付いたヱヴァの勇気がすがすがしかった。良い場面だった。


大きな事件が起こってドラマが終わるわけではない。私は最初、このドラマは(キリがいいから)ルークの赤ちゃんが生まれるところで終わるのだろうと思っていた。ところが(ポールのガールフレンド)マヤの出産は第8話。そして第9話にはその半年後が描かれている。

制作が赤ちゃんの誕生(事件)をドラマの締めくくりにしなかったのは、意図的だったのだろうとも思った。赤ちゃんが生まれても家族の日常は続いていくのだ。Worsleys家の日常はこれからも山あり谷ありだろうけれど、これからも彼らの物語は続いていく…それがシーズン4のメッセージなのだろう。その後が描かれることはないけれど、彼らはこれからもきっと大丈夫。


脚本も一流。一見コメディ風ながら人々の描写はリアルで、果ては人の人生の本質にまで触れている。俳優の演技も超一流。丁寧に作られたロンドンの「現代版・普通の人々」のストーリー。これほど心に沁みるドラマもなかなかない。


第5話でポールが「この人生も悪くない」と納得していたのが印象的。
最後の夫婦の場面もしみじみといい場面。ルーク君の子供の頃を思い出す。

いいドラマでした。これからもWorsleys家の幸運を祈る。

また10年後ぐらいに彼らのドラマをやってくれないかな…。


EPISODES Season4 --------------------------------------------------

1 Noël
夫婦の過去5年間を振り返る。夫婦は離婚寸前。ルークがパパに?
2 No Alternative
事実が受け入れられない夫婦。ルークはガールフレンドと同居を始める。
3 No Age
アリーが50歳に。ポールが不安なルークに寄り添う。ヱヴァがホリーに出会う。
4 No Dinner
ヱヴァがカミングアウト。計画が狂いっぱなしの夜のドタバタ。
5 No Regrets
ルークの進学問題。ポールの両親が独立型ケア付アパートへ。ポールの人生観。
6 No Arseholes
アリーの女友達との距離。アリーには家族がいる。
7 No Kids
ポールとアリーが旅行へ。
8 No Control
マヤの出産。両親の不在で狼狽えるルーク。
9 No Matter What: Part 1
ルークが学校と家族との時間の調整に苦しむ。ジャッキーの老い。
10 S4.E10 ∙ No Matter What: Part 2
老いる両親を支えるポール。ルークの意志。何が起こっても…これからも家族は続いていく
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2023年7月23日日曜日

映画『大草原の小さな家・初回パイロット版・旅立ち/Little House on the Prairie・Pilot (Film)』(1974):アメリカの本質を学ぶ



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『Little House on the Prairie・Pilot (Film) (1974)/米/カラー
/96m/監督:Michael Landon』
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Amazon Prime Video にて鑑賞。


ここに書いたことは全て私の個人的な意見。ドラマの感想というよりもアメリカに関する個人的な考察をメモしています。私の個人的な経験によるアメリカに対する複雑な感情を整理しようと試みた。


アメリカ人と結婚することは、「アメリカ人とは何だろう」の疑問を探求するライフワークを始めたようなものだった。

私がここで言う「アメリカ」とは東海岸から中西部のみ。それ以外の場所のことを私は知らない。

ちなみに今住むハワイは本質的に「アメリカ」だとは私は思っていない。だからここに書くことにハワイは含まれていない。ハワイはアジア寄りの違う文化圏にあると私は思う。



アメリカの北東部(首都ワシントンD.C.より北)から中西部の地域は、歴史的に長い間アメリカの土地であったことから、私は「最も伝統的なアメリカの本質」はこのエリアに存在すると思っている。白人が多数。プロテスタント多数。日曜日には教会に行きママのアップルパイを愛する地域。(フロリダやテキサスやカリフォルニアにはまたそれなりのアメリカがあるのだろうと想像する)


私が知ることになったアメリカは、昔私が日本で雑誌や映画を見て想像していたものとは違っていた。外から見るのと、中に入ってから見るのでは印象も変わってくる。

一番驚いたのは、この地域のアメリカの白人が予想以上に真面目で保守的で排他的だったこと。Xenophobic…外国、異文化を嫌う人がアメリカにはいる。白人の保守層の中には異人種や異文化を異様なくらい警戒する人々がいる。彼らは、自分たちの作った美しいネイバフッド以外は全部「敵」だと思っている…と言っても過言ではない。彼らは生真面目で勤勉、清く正しくまっとうな人々。しかし彼らの中身をよく見れば驚くほどに排他的な顔が見え隠れする。

なぜだろうと思った。アメリカとは「人種のるつぼ」で「自由の国」「アメリカンドリーム」の国ではなかったのか? …それはニューヨークやカリフォルニアの話だ。


私が以前住んだ英国の人々は、異文化も十分に受け入れているように見えた。国際的大都市ロンドンには世界中から人々が集まってくる。多くの異文化が混ざり合う都会の中では、アジア人の私も問題なくそれなりに馴染むことが出来た。英国ではあからさまな「区別」による不快感を感じることは少なかった。ロンドンの以外の地方に旅しても、むしろ異文化に興味を持ってくれる人の方が多かった。英国では喋ればなんとかなる。喋って理屈をこねれば会話が成り立つ。英国には「話せばわかる」人がかなりいた。それが心地よかった。

しかし北東部~中西部のアメリカの一部の人々は違った。会話をしてもどうもしっくりこない。壁を感じる。私の存在は彼らを緊張させる。私の登場で会話が止まる。いつまでたっても私は「アウトサイダー」のまま。 そもそもこの伝統的アメリカの人々は外国や異文化に興味を持たない人も多い。もちろん個人差はあるが「お前のことは絶対に受け入れない」と頑なで失礼な人々も少なからずいる。

そのような頑なな白人の人々を私は英国ではほとんど見たことがなかった。前述のように英国は「話せばわかる」人が多かった。外国人の私との会話を面白がる人も多くいた。彼らは「異文化」からやってきた私に興味を持ってくれた。

だからアメリカで「拒絶」に出会うたびに私は戸惑った。そして暫くして気付いた…驚いたことに彼らが拒絶する対象は私のような異人種の外国人ばかりではない。彼らの警戒心は別の地域からやってきた白人にさえ向けられていた。それらの頑なな人々は「外」に対する警戒心が強すぎて、まるで自分たちの「村」以外の存在を全否定しているようにさえ見えた。

アメリカには失礼な人々がいる。理解できないほど不愉快な人々がいる。全く残念なめぐりあわせ。会わなきゃよかった。そういう人々が存在するということを私はアメリカに関わって初めて学んだ。


そしてまた疑問を抱く。なぜだろう?なぜ彼らはそんなに排他的なのだろう?なぜ彼らは「よそ者」を異様なくらい警戒するのか?なぜそこまで「自分達だけの心地よいコミュニティーを守る」ことに必死になっているのか?

その答えのひとつがこの『大草原の小さな家・初回パイロット版・旅立ち』に見えたと思った。



★ネタバレ注意


このドラマ・シリーズは実話を元にしている。ミネソタ州の町ウォールナット・グローブでのインガルス一家の生活を元に描かれたこのドラマは、1975年開始から1983年のシーズン9まで放送された長寿ドラマ。

インガルス家の次女・ローラの残した記録によると、インガルス一家は元々住んでいたウィスコンシン州 Pepinを後にし開拓者として西に向かった。その時期は1869 年から1870年にかけて。幌馬車に乗り父親、母親、幼い女の子3人で西を目指した。そしてカンサス州の Independence 近くの荒野にたどり着き、自分たちで家を建て、1875年まで自給自足の生活を送った。このパイロット版「旅立ち」はこの時期の一家の様子を描く。


若い夫婦が幼い女の子3人を連れて幌馬車で長い旅をして荒野にたどり着き、木を切り倒し、自分達で家を建て、川から水を汲み、土地を開墾して野菜を育て、馬を飼い…。彼らはほぼ自分達だけで荒野での生活をスタートさせる。

とんでもない苦行だ。特にお母さんにとって3人の小さな娘さん達をそのような過酷な旅に連れていくのは大変辛いことだろう。お父さんは行きたいところに行きたいだけだろうけれど、お母さんは苦労ばかりだ。まさに生きるか死ぬかのサバイバル。本気のサバイバル。

そして彼らに降りかかる災難。草原が燃えることもある。必死になって彼らは家を守り生きようとする。

そしてある日インディアン(ネイティブ・アメリカン)がやってくる。元々その土地はインディアンの土地であった。当時白人入植者とインディアンは各地で戦争中。白人にとってインディアンとは大変「恐ろしい異文化/異人種の人」であり「敵」であった。最初にやってきたインディアンは言葉が通じない。夫は不在。母親は女一人で幼い3人の女の子達を守る。母親にとっては極限の恐ろしさだろうと想像できる。また別の日には「狼」が家の周りをうろつく。父と娘は家の門の前に銃を構えて家を守る。

これ。きっとこれだ。排他的なアメリカの人の本質はたぶんここにある。


アメリカとは、開拓者が荒野を切り開いてつくりあげた国。その人々の多くは欧州からやってきた真面目で勤勉なプロテスタントの人々。彼らは荒野を耕し、町を作り、周りからやってくる狼や熊などの野生動物、そしてもしかしたら襲ってくるかもしれない「恐ろしい異文化/異人種の」人々から必死に身を守りながら町を作ってきた。襲い来る「他者」を排除し戦わなければ彼らは生きていくことができなかった。

アメリカの一部の保守的な人々に、異文化に対する警戒心が今も残るのは、もしかしたら彼らのそのような歴史からくるものなのかもしれないとあらためて考えさせられた。


アメリカの人種に関する問題は彼らの歴史と密接な関係にある。
16世紀、欧州でプロテスタント(新教徒)の出現と宗教改革、続いて宗教戦争が起こると、新教徒は新天地を求め相次いでアメリカに入植した。彼らは先発のカトリックやインディアンと敵対しながら勢力を伸ばす。真面目で勤勉な彼らは、自由と幸せを求めてアメリカに移住し「異文化/異人種の」人々を攻撃して戦い土地を奪い、自分たちだけの美しい町をつくり、痩せた土地に「異文化/異人種の人々」を追いやり保留地(Reservation)に閉じ込めた。そしてその後、今度は南部から別の「異文化/異人種の」アフリカ系の人々がやってくれば、今度は街の中に線引きをして彼らをそこに閉じ込めた。

近年よく言われるsystemic racism/制度的・構造的人種差別の元はそのあたりにある。

過去の(東部~中西部の)アメリカの白人はことごとく「異なる存在」を自分たちの生活圏/縄張り/コミュニティーから排除し続けた。その理由は彼らの中にある「未知のもの」「異種のもの」に対する「恐れ」。そして彼らはその「恐れ」から銃を手に取る。


その後20世紀にアメリカは文字通り世界一の国に成長した。経済力、軍事力共に強いアメリカを作った白人社会は、力のみならず知性や能力、文化的にも自分たちが「異文化の他者」より勝ると思うようになった。彼らが開拓時代に必要に迫られて作った「人の区分け」の制度。そしてその制度と思想は人々の移動と共にアメリカ全土の白人社会に広がった。一部の人々の心は未だにその「区分け」に囚われて抜け出せずにいる。


このパイロット版「旅立ち」を見れば、彼らの「恐れ」の理由が少しは理解はできるかもしれない。理解できれば少しは納得もする。なるほどである。そしてそのように長い時間をかけて形成された彼らの排他的気質と習慣を考えれば、彼らがそのやり方を改めるにはまだまだ時間がかかるだろうと私は思う。


未知の国アメリカ。
「アメリカ人とは何だろう」の探求は続く。


ドラマのシリーズは子供の頃に楽しく見ていたが、今になって「アメリカを知る資料」として見ることになるとは考えもしなかった。これはテレビ映画/ドラマとしても良作です。何度もドキドキさせられるし、開拓者達の苦悩と頑張りは十分に理解できる。歴史的なドラマとしても大変興味深い作品。アメリカ人の本質を色々と考えさせられた。


2023年7月11日火曜日

英ドラマ FX『ブリーダーズ 最愛で憎い宝物/Breeders』(2022) シーズン3:今度は娘だ!







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『Breeders』(2020-) TV Series – Season 3/英 ・米
/カラー/約30分 ・全10話
Creators: Chris Addison, Simon Blackwell, Martin Freeman
Season 3 US Release Date: May 9, 2022
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『ブリーダーズ 最愛で憎い宝物/Breeders』のシーズン3。米国FXでの放送は2022年5月9日から7月11日まで。全10話。

このシーズン3は去年5月~のTVでの放送を見逃していた。先日今年のシーズン4がもうすぐ始まると聞いた。そこでAmazon Prime Videoで配信のデータを購入。今どきはわざわざDVDを買わなくてもいいのが便利。シーズン3の全10話で20ドルぐらいだったか。データは保存されているので何度も見直し可能。値段もお手頃。いいサービス。


シーズン3はシーズン2から直接継続する話の流れ。二つのシーズンで一つのドラマになっている。

元々子育てあるあるで始まったこのコメディ・ドラマも、3シーズン・30話を経て(子育ての話だけではなく)主人公の夫婦・ポールとアリーを中心とする三世代の家族の物語へと成長した。3シーズンを見終わって登場人物達に愛着も沸いた。まるで親戚の家族を見ているような気持ちになる。


長男ルークは中二病で反抗期を継続中。しかし少しずつ氷は解け始める。そしてそれまで「いい子」だった娘エヴァが反抗期に入る。ルークが落ち着くと同時にエヴァが不満を露にし始める。シーズン2からの流れで家族の「問題」がシフトしていく様子が興味深い。複数の子供の反抗期あるあるのリアルなのだろうか。ドラマに見入ってしまう。1話30分を見て、次も次もと見続ける。

ポールとアリーはうちの夫婦よりも少し下の世代。中年になって彼らの健康状態も変わった。子育ての難しさと共に、子育て以外の様々な問題も夫婦に降りかかる。…そうなのだ。こういう日々をきっと私の同級生たちも10年ぐらい前に経験していたのだろうとあらためて考えさせられる。


それにしてもどうすりゃいいのだ思春期の子供の反抗期。自分が子供だった時のことしか経験が無いから、それが親にとってどういうものなのか私にはさっぱりわからない。私自身が親子関係をうまく通過できなかったので「よその家族はどうやっているんだろう」と興味津々。知りたい。もっと知りたい。だからドラマにじっくりと見入る。

結局ポールとアリーは上手くやっているのだろう。彼ら親子の問題はあまり後を引きそうに見えない。彼らはきっとうまくやっているのだ。
ポールとアリーにとって今は辛い時期。中年の彼らには様々な問題が内から外から次々と積み重なる。子供たちは反抗期で、家族の不協和音は確かに聞こえてくるけれど…、しかしそれでも彼らはなんとかやっている。皆怒りをため込まず適度に吐き出すのもいいことなのだろう。喧嘩をしながら、ぶつかりながら、怒鳴りあいながらも彼らは家庭内のコミュニケーションを続けている。会話をし続けている。両親が子供達を愛しているのは明らかで、子供達もいつかきっとそれを理解して受け止めるのだろう。 不協和音を響かせながらも家族は前に進んでいく。きっとそれでいいのだ。

また大都会に暮らす家族だから(アリーやポールがそうであったように)子供達も今後両親からそれほど離れて住むことはなさそうだ。彼らはこれからも様々な場面で交流しながら日々を送っていくのだろうと思う。


このドラマは3つのシーズンを経て、Worsleys家の三世代の家族の物語になった。英国ロンドンの大都市に住む今の時代の三世代の家族の物語。登場人物たちそれぞれに愛着が沸いて親戚や知り合いの家族を見守るような気持ちになっている。ますますこの家族に魅了されている。


俳優さん達が皆素晴らしい。いい脚本。派手ではないがリアルな普通の人々のドラマ。ここのところ私の一番好きなドラマシリーズだと思う。


ルークとヱヴァの俳優さん達が大きくなった。シーズン2に比べてびっくりするほど成長していた。二人ともずいぶん大人びて、たぶん役の設定よりも年齢が上なのかな。

アリーの口が悪くて気の強いお洒落なお母さんが面白い。彼女は若い頃はかっこいいイケてる美女だったのだろう。彼女は友人として見るなら元気のいい素敵なマダムだけれど、しかし母親だったら娘は嫌だろうね笑。
 

シーズン4は、米国では今月7月31日からFXにて放送開始。



★ネタバレ注意


あらすじ
夫ポールは家族と離れて暮らしている。ある日腰の痛みを訴える。ポールの病が明らかに。息子ルークと和解。妻アリーは更年期障害の真っ只中。彼女の会社の危機。アリーは不安定。娘エヴァが不満を口にする。親の努力は空回り。アリーとエヴァの距離が離れていく。エヴァは教会に救いを求める。エヴァは友情を優先しようとして道を誤る。ポールの怒り。一方ルークは中二病を卒業して学生生活が楽しくなる。ポールの両親の過去が明らかになる。雨降って地固まったのか?


EPISODES--------------------------------------------------

1 No Direction Home
ルークの要望によりポールは家族と離れて義母の家に住む。
2 No Worries
ポールが一人暮らしを楽しむ。アリーが追い詰められる。
3 No Comfort
ポールの腰の痛み。ルークと和解。アリーとエヴァの不仲。
4 No Body
ポールとアリーの健康問題。子供たちは?
5 No Can Do
アリーの会社の危機。ポールの仕事は?
6 No Show
ヱヴァとアリーの距離がますます広がる。
7 No Pressure
夫婦は仲直り。ヱヴァの過ち
8 No Way Back
ポールの両親の過去
9 No More Part I
ポールの母が家を出てポール達と同居。
10 No More Part II
ポールの父の入院。家族はどうなっていくのか?
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2023年6月8日木曜日

米ドラマHBO 『The Idol』(2023) 第1話:裸大安売り 薄っぺらの安ドラマ





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『The Idol』 (2023)
TV Series/米/カラー
/54分・全6話/
作:Reza FahimSam, Levinson, The Weeknd』
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「若い綺麗な女の子を剥いて裸にして適当にポップスターを並べればそれでよし」みたいなドラマ。どうだエンタメの世界は悪いだろう、クールだろう、怖いだろう、かっこいいだろう、エロいだろう、ショッキングだろう…と制作が若いターゲットの視聴者を驚かそうと必死に頑張ってる感じ。もちろんターゲットの視聴者はアメリカの女子高校生。

Black Pinkのジェニー (Jennie Kim)ちゃんが出るというので見ようと思った。去年からTV CMが流れていたし、これは「鳴り物入りだな、期待できるかな、今どきのアイドルビジネスの話なら面白いだろう」と思っていた。


ま~しかし裸を見せればいいというものでもなかろう。ジョニー・デップの娘さんのリリーローズ (Lily-Rose Depp)さんはお母さんによく似ている。その娘さんがよく脱ぐ脱ぐ。バナナのたたき売りかと思うほどの裸の大安売り大会。それが見どころでしょう?苦笑 仕事選んだ方がいいと思いますね。

肝心のBlack Pinkのジェニーちゃんもダンサーに混ざってエロダンスを踊っただけ。台詞はほとんどなし。このドラマ、制作の男たちがリリーローズさんの裸が見たいだけで、ジェニーちゃんは添え物でしょう(とりあえずアジア人を入れればポリコレ的に良いということか)。酷いですね。ジェニーちゃんこそが本物のポップスターなのにもったいない。白人の作るドラマのアジア人の扱いは酷いと始めからわかっていてもやっぱり腹が立つ。

その上に、ポップスターのThe Weekend (Abel Makkonen Tesfaye)とTroye Sivan君(彼はいい歌を歌う)を投げ入れれば、アイドル好きの女子高校生がよく見てくれるだろう…とそんないい加減な企画に見える。


この感想を書いているのも、あまりにあからさまに安く女の子の裸を見せて、どうだどうだと言われているようで不快なので全部見ることもないかもしれぬと思い、とりあえず第1話の印象を書いておこうと思ったから。テーマは面白いものになる可能性のある素材なのに、この第1話でこれ以降に何を期待しろと言うのか?世間の評判も散々だそうですね。そりゃぁそうだろう。


裸が悪いわけじゃない。
若い女の子はかっこいいエロに憧れるもの。若い女性(高校生~20代前半)が実は綺麗な女性の裸がそれほど嫌いじゃないのは本当の話。若い女性が綺麗な女性(裸でも服を着ていても)を見て「かっこいい」とか「素敵だ」とか「ああ、ああいうオッパイが綺麗なのか、ああいうダンスがいいのか…参考にしよう」などと思うのは普通のこと。だからこのドラマが(マーケティング的に)若い女性視聴者を惹きつけるために、綺麗な女の子を剥いたりセクシーなダンスを躍らせているのは理解できないわけじゃない。現実にも多くのポップスター達はそういう見せ方をして若い女性ファンを惹きつけている。

しかし、その「綺麗な女性」が若過ぎるのはいけない。
リリーローズさんは24歳だそうだが、もっと若く見える。若い小柄な女の子が裸になるのは痛々しいのよ。もっと堂々とした大人の女じゃないと「この女優さんは無理してるのかな~」と心配になってしまう。裸になる女優さんは、若い女性視聴者がエロを忘れて圧倒されるぐらい「かっこいい」と憧れるようでなければ裸になるのはやめた方がいい

脱ぐ女優さんがあまりに小柄で細いと犠牲者とか被害者(Victim)に見えてしまう。これだけ女優さんを脱がせるのなら、もっと年齢が上で20代後半(そうなるとアイドルのドラマではなくなるが)、身長も170㎝ぐらいある人じゃないと、…なんだか160㎝のリリーローズ さんの裸は見ていて痛々しい。そしておそらく制作の男たちは、その小柄で細いリリーさんを裸にするのが嬉しいんだろうねと思ってしまう。男の妄想だらけ。それがすごく汚らしくて嫌。リリーローズ さんは表情はふてぶてしくていいのですけどね。しかし小柄な細い人がかっこよく裸になるのは難しいものだと思う。個人的な意見。

# MeTooの時代に?
それからThe Weekend(テドロス)とリリーローズ(ジョスリン) の役柄での関係も不安。テドロスはミステリアスなクラブのオーナーで、どうやらアイドルのジョスリンが危険な恋に落ちる相手らしい。現実のThe Weekendさんは33歳。ジョスリンは若いアイドル。要するに若い女の子と30過ぎのおっさんが危険な恋に落ちるって、もうその設定がすご~くだめだめ。そんな古臭い設定、いつの話よ。濃いおっさんと若い女なんて…# MeTooの時代に何やってんだと思う。The Weekendさんはあまりいい役者でもない。

とあるシーンで壁にPrinceのポスターが貼ってあって、あぁ、1980年代の「あのあたり」をクールだと思っているのか…と思ったけれど、80年代のPrinceはバリバリに色気のある人でしたからね。何を考えているのかわからないミステリアスな天才の魅力。The Weekendさんにそのような魔力は感じない。

そうそう、ヴァニティさんやアポロニアちゃんは大柄でかっこよかった。


過去のポップカルチャーや事件へのリファレンスもちらほら。Princeのポスターや楽曲の使用もそうだし、クラブにはマドンナの「Like a Prayer」が流れる。『氷の微笑/Basic Instinct』の映像も流れていた。白髪の女性(レーベルのエグゼクティブ)は「シャロン・テート」の名前を出す「精神を病むのはセクシー」などと言う(不快)。The Weekendはコカインすーすー。Live Nationの男はエゴの大きな最低野郎。そして最後にジョスリンとテドロスの湯気出るシーンの会話。…もうよしなよ。いいかげんにしなよと思う。制作が今の若いオーディエンスに向けて、ドラマをショッキングな内容にしようと必死になって頑張ってるのが見えて本当に恥ずかしい


今の年寄りは若い頃にブライアン・デ・パルマとか『白いドレスの女』『ナインハーフ』『蘭の女』とか(他になにがあったかな…)エロな映画を見ているのでこのようなドラマを見てもびくともしない。昔は綺麗な女優さんが普通の映画でよく脱いでいた。みんな大柄な女性でしたね。


監督は1985年生まれのSam Levinson氏38歳。有名な監督Barry Levinson氏の息子さんだそうだ。近年ドラマ『Euphoria』がヒット。『Euphoria』はちょっと見ようと思ったら暗かったので見るのを10分で止めたドラマ。だから合わないのかも。今どきの若者向けドラマは無理なのかもしれん。

30点


ジョスリンの付き人の地味な女の子レイラ。
あの子がジョスリンに嫉妬してますよね。



2023年5月11日木曜日

仏/英ドラマCanal+/BBC『Marie Antoinette』(2022):子供だまし!『ベルばら』を読んだ方がいい






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『Marie Antoinette (2022) Season 1 – 8 Epsode/仏/カラー
/1話52 m/脚本:Deborah Davis』
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18世紀フランスの宮廷。王妃マリー・アントワネットのなんちゃって伝記大河ドラマ。

制作はフランスCanal+と英国BBC。脚本は英国人、監督はベルギー人と英国人他。英語劇。俳優は欧州各国より集合。

米国での放送は公共放送ネットワークPBS(Public Broadcasting Service)。オリジナルのリリースはフランス2022年10月31日、英国12月29日、米国2023年3月19日。

シーズン1はアントワネットの子供時代から彼女の長男の誕生(1781年)までを全8話で描く。



歴史の再現を楽しむドラマではない。「18世紀のベルサイユにタイムスリップした現代の女の子」のようなドラマ。またいつもの軽薄なマリー・アントワネットを描く作品。既に何度もリサイクルされている彼女の評判を、またカジュアルなマリー・アントワネットのファンに向けて再構築。今回も結構酷い。

今まで様々なフランス18世紀関連の映画やドラマを見てきたが、マリーアントワネットに関して歴史にリスペクトを込めて作られた作品を今までほとんど見たことがない。いったいどういうわけだろうかと思う。あれほど彼女の人生はドラマチックなのに。

そもそもイギリスやハリウッドには何も期待していない。しかしフランス産のドラマや映画もあまりいい作品の記憶がない。2000年の初頭に見た仏産のドキュメンタリーが良かったぐらいか(どうやら記憶違い。調べたがどの作品かわからない。TVの放送を見た)。(私が想像するのみではあるが)フランス革命関連に関しては事実日本人が(歴史へのリスペクトを込めて)一番知識が多いのではないかと本気で考えてしまうほど。


(今の)だいたい60歳前後世代の日本の女性はフランス革命に比較的詳しい人が多いと思う。それは(私を含む)その世代の女性の多くが、子供の頃に池田理代子氏の『ベルサイユのばら』を読んでいるから。その世代の人々の中には、漫画とアニメと(もしかしたら)宝塚などでストーリーに親しんだのみならず、漫画をきっかけにフランスの歴史に興味を持った人も多い。「フランス革命オタク」と呼んでもいい層もかなりいると思う。たぶん私も(カジュアルではあるが)その一人。

オタクになったら探求するのみ。本を集め資料を漁り、果てはフランスのベルサイユやパリにその歴史の痕跡を求め旅をし、少しでもその時代の名残りを身に感じようとする。時間をかけて探求してきたから素材に対する知識もある。(人によって得意分野は分かれるだろうが)そんな「フランス革命/フランス史オタク」の興味の対象は歴史の流れのみにとどまらず、歴史の登場人物たちの人となりやその時代ならではのしきたり、慣習、ゴシップ、18世紀当時のファッション、美術品、文化に至るまで果てしなく広がり続ける。歴史を愛し探求する者は皆、その歴史の時代の空気を少しでも感じたいと願う。

そのような「18世紀フランス歴史オタク」を映画やドラマなどで喜ばせるのは、実際にはかなり難しいのだろうとは思う。


しかしそれにしても実在の歴史上の人物を描くのならせめてその人物に敬意を払い、史実からはあまり外れてほしくないと思うのは求め過ぎだろうか。

マリー・アントワネットとは、激動の時代を生きた彼女の人生そのものが他に比べられないほどドラマチック…映画やドラマを作るのなら何の脚色もいらないほどの素材。歴史をそのまま再現すればそれだけでかなり面白い話が描けるはずなのに、このドラマはまた…「おつむが足りないウブな現代風の少女が18世紀のフランス宮廷にやってきた」…話をまた繰り返している。もうそのような軽薄なものはコッポラの映画で十分なのに。

そして(近年の欧米の歴史ものドラマではいつものことではあるが)性に関する描写も必要以上に多い。18世紀の宮廷が性にゆるかったのはわかるが、それをマリー・アントワネットのドラマで見せる必要はなし。不快。女性同士の嫉妬心やライバル心などによる争いごとも必要以上に強調されているのも不快。

脚本を担当したのが、英国のアン女王を不快極まりなく描いた『女王陛下のお気に入り/The Favourite』のDeborah Davis氏であれば、ああなるほど…期待してもしょうがないかと思う。この脚本家の視点は基本的に品がない。そういう下世話なことにしか興味のない人なのだろう。



★ネタバレ注意

第1話を見て「またか」とがっかりし、その後あまり真面目に見ていなかったのだけれど、それでも気になった点を挙げておこう。録画を残してないので確認できないが、おかしな場面はもっとあったと思う。
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大食漢で大柄なはずのルイ16世が瘦せ型の長身の青年に変わっている。
● フランスでもオーストリアでも宮廷ではお堅いマナーやエチケットが当たり前だったはずなのにこのドラマの宮廷はゆるゆる。身分の上下関係もあまり感じられない。
● マリー・アントワネット(以下アントワネットで)が最初からデュ・バリー夫人と親しく会話をし、果てはキスの手ほどきを受ける場面で怒り心頭。バカか。
● その後なぜかあの有名なデュ・バリー夫人への「話しかけ」の場面も再現されるが、野外で数名が突っ立っているだけの珍妙なシーンに変わっている。
● デュ・バリー夫人が不自然に前に出過ぎ。安易なアントワネットのライバル設定だろうが笑止千万。
● アントワネット付きの女官長・ノアイユ伯爵夫人のアントワネットに対する態度はあれでいいのか?
● アルトワ伯はどこ?
● ポリニャック公爵夫人は宮殿で3P。不快。
● ウブなルイ16世が女性の扱い方がわからないので娼婦から性の手ほどきを受ける?ばかばかしい。あれは身体の問題だったはず。
● アントワネットは妊娠のために昼間から半裸で脚を中に浮かせる。はしたなく不快。
● どの俳優も欧州各国から調達したせいか、英語の台詞での芝居に慣れていない俳優も多いのではないか。欧州俳優の訛りを優先したのか。だったら最初からフランス語でやればいいのに。
● アントワネットの肖像画の問題(大問題!)後述。

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ネタバレ終了


歴史の人物たちに対してリスペクトを感じられない。純情な女の子が政略結婚で遠方の外国(敵国)の宮廷に嫁ぐ話ならそれだけでも十分ドラマチックなのに、このドラマはそんな基本の話さえ女同士の争いごとやゴシップに変えてしまっている。宮廷でガチガチのルールやしきたり、決まり事の中で生活するからこそ人と人の関係の乱れが歪なバランスで興味深いのに、このドラマは全てがゆるくて品がなく、いつまでこのようなぐだぐだを見せられるのかと途方に暮れる(それでも見るけれど)。

一番呆れたのは、アントワネットから彼女の母親/オーストリア君主マリア・テレジアへ送られたアントワネットの肖像画。間違ってますよそれ。その絵はポリニャック公爵夫人の肖像画。この映画の制作チームは恥を知れ。誰か注意する人はいなかったのだろうか。これがフランスのプロダクションだとは信じられない。

…とかなんとか言いながら、第2シーズンも制作決定だそうです。このドラマは軽薄で下品な茶番。しかし素材は個人的に好きすぎる、愛着がありすぎる。だからまた来年も見ると思います。セットや衣装は豪華で綺麗だし。

それにしてもこの英国人の脚本家は、18世紀のフランスの政治に全く興味がなさそうだけれど、これから当時の世の中が緊張してきて、王妃が歴史の激流に飲み込まれていく様子をまともに描けるのかどうか甚だ疑問。革命は軽い気持ちで描けるような素材ではない。いったいあの血なまぐさい時代をどう描くのだろうと違う意味で興味がわく。そこまでシリーズが到達できるのかどうかも疑問だけれど。

というわけで日本の「フランス革命オタク」の方々は、このドラマにはあまり期待しないほうがよいとだけ書いておこう。とはいえ私も最後まで見たので見ればそれなりに楽しめるかもしれません(回が進むにつれ次第にドラマの雰囲気にも慣れてきて違和感も減り見るのが楽しくなったのは事実)。

またフランス歴史熱がぶり返すかな?また読もうかな。



2022年10月17日月曜日

英ドラマ BBC/HBO『インダストリー/Industry』(2022) シーズン2:子猫が人食い虎に成長・面白くなった




 


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『Industry』 (2022) TV Series-Season2/英・米/カラー
/約60分・全8話/
制作:Mickey DownKonrad Kay』
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録画を見終わった。
英国BBCと米国HBOの制作。米国での放送はHBOチャンネルで2022年の8月1日から9月19日まで。

シーズン1では、
5人(―1人)の新卒がロンドンの投資銀行 Pierpoint & Co に入社して彼らがどのように業界で生き残っていくのかを描いた。しかし金融の仕事はほとんど描かれずその雰囲気のみ。若者たちが迷いながら躓きながら生き急ぐ様子がメイン。後半でメンバーが社内の政治に巻き込まれて多少面白くなった。



★ネタばれ注意

シーズン2では
Pierpoint & Co に生き残った3人と退社した1人のその後を追う。
主人公はハーパー。金融の仕事の内容がドラマの筋に絡んでくるのはこのキャラクターのみ。他の3人のストーリーはサイドストーリー(後述)。


Harper Stern
 ニューヨーク出身。上司エリック/Eric Taoの元 Cross Product Sales (CPS) desk でセールス担当


シーズン1から3年が過ぎた。皆入社して3年目。ドラマは、コロナ禍にホテル住まいでリモートから仕事をしていたハーパーが会社に出社するところから始まる。どうやらハーパーは長い間のホテル住まいで居心地が良くなりすぎたらしく、なかなか出社したがらない。そんな彼女を師匠のエリックが叱って出社させるが、同僚は彼女に冷たい。

しかしハーパーにはリモート中に新しい知り合いができた。大取引で知られる業界の有名なヘッジファンドマネージャー 大物ジェシー・ブルーム。彼の存在がその後のハーパーの仕事の軸となる。

ドラマが始まって早々、ハーパーはクライアントととのミーティングをすっぽかしジェシーの講演を聞きに行く。ハーパーはその後もエリックのクライアントを怒らせたりと失敗するが、ある日ジェシーが連絡してきてハーパーは大きな取引を成功させる。ジェシーとの大取引でハーパーは自信を持ち始め、エリックの指示にも逆らうようになる。エリックのクライアントとジェシーとの取引を壊し、その代わりにジェシーとの取引で自分のみが売上を上げる。そのことが次第にエリックの会社での立場を危うくしていく。


このシーズンではジェシー・ブルームとの取引を通してのハーパーの成長を描く。たった入社3年目で彼女がいかに大きなチャンスを掴むのか、それに伴って彼女がいかに自信を持ち、頭の良さと度胸、攻撃性でのしあがり、同時に周りを蹴落とし、業界で力をつけて生き残っていくのか…。

最終回に向かってゆっくりと構築される Amazon/FastAideとRicanの話は面白い。うまいものだと思う。その他にもそれぞれのキャラクターに様々なサイドストリーがあるが割愛。



私はシーズン1の感想で「このドラマは無駄なセックスシーンが多くて邪魔」「若者たちのSex, Drugs & Rock’n Rollを金融業界で描いてそれでよしとした薄っぺらい安いドラマ」などと書いたのだけれど…、

シーズン2はもっと面白くなった。金融業界を描いたドラマとして面白くなった。誇張があるとはいえ金融の仕事ってこういうものなんですかね?と興味を持って見ることができた。ずいぶん勉強になった。業界を知る人にもそこそこ見られるレベルの代物であるらしいから金融モノのドラマとしてそれほど悪くはないのだろう。

それでも(トーン・ダウンしたとはいえ)相変わらず無駄で不毛なセックスは多い。人物達が誰一人として愛のあるセックスをしていない。制作はそれがかっこいいと思っているのだろう(バカですね)。ハーパーとヤスミンは女性なのにあんな風に誰とでも見境なく(同僚とも)寝て、それでまた翌日から普通にまた同僚と仕事ができるものかとあきれる。男が書いた脚本だからだろう。あのようにセックスに感情を全く絡ませないのは普通の人間には無理。要はそれらのシーンは意味のない飾りなだけ。無駄だから早送り。


相変わらずハーパーの上司エリックがいい。彼が一番面白い。飼い始めたかわいい子猫ハーパーが人食い虎に成長したものだからとんだ迷惑を被ってお気の毒。そろそろミッドライフ・クライシスの年齢か。ニューヨークから帰宅して、子供に添い寝しながら一瞬頭に浮かぶ「元カノ」とのやりとり…あれは幻なのか現実なのか(たぶん現実)。とにかくこのエリック・タオを演じるKen Leung さんがいい。いい俳優さん。彼がハーパーを娘のように可愛がる様子が何とも言えずほほえましい。

主人公のハーパーを演じるMyha'la Herroldさんは小柄なアフリカ系のアメリカ人の女の子。小柄な女性が、厳しい金融業界でのしあがり成功していく…一見違和感のあるミスマッチな設定はおそらく意図的なものなのだろうと思う。視聴者は彼女の成長をまるでゲームを見るように眺めてハラハラする。

ハーパーはその小柄なかわいい外見とは反対に、中身は決してかわいらしい人物ではない。このシーズンの彼女はまるで猛獣のように攻撃的だ。あまりにも同僚や、師匠のエリックにまで皆に牙をむくので、彼女はそれで大丈夫なのかと心配になる。

ドラマだからこそ業界の様子を極端に誇張しているだろうことは想像できるが、彼女の行動はたぶん会社をクビ…いや現実の会社だったら間違いなくクビ。というのも金融業界での取引は、結局は人と人との関係で成り立つことが多く、このドラマのハーパーのように人を蹴落とし、裏切って、周りを見ずに一人突っ走るような人物は、結局は業界では生き残れないと言われているからだ。人と人の信頼関係は取引の金額が大きくなればなるほど重要になってくる。

それにしてもハーパーの成功がジェシー一人との関係だけだというのも危ういもの。このジェシーのキャラクターは今後のシーズンにも出てくるのだろうけれど、それにしても彼女の価値がジェシー一人との取引だけというのは危ない。いったん関係が切れたら彼女の価値は無になる。今後のシーズンでジェシーとハーパーの話をどのように繋いでいくのかは見どころ。

ジェシー・ブルームのキャラクターも、彼を演じるJay Duplassさんもとても魅力的。彼御本人は監督やプロデューサーもなさっているそうだ。多才ですね。

さて最後のハーパーのその後はどうなる? シーズン3に期待。


その他のキャラクター達

Yasmin Kara-Hanani
Pierpoint & Co 社員。金持ちの娘。数か国語を話す。美人、父親の富、リッチなサークルの人脈…等々によりForeign Exchange Sales desk からprivate wealth management divisionへ移動。

Robert Spearing
Pierpoint & Co 社員。父親との関係が穏やかではない。自信がなく成績も振るわないが、大きな女性クライアントの懐に入り取引をする。

Gus Sackey
1シーズンの終わりでPierpoint & Co を退社。途中からジェシーの息子の家庭教師に。またMPの元で働くようになり政府の情報を仕入れる。


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私は金融関連に興味がなくて無知で「Long」や「Short」の意味もわからなかったのだがやっと理解した。メモする。

株で投資とするとして…

Long(買い)=上がったら儲け
自ら安く株を買って、値が上がった時に売り儲けを出す。
一般的な株の投資

   株500円を買う
   → 値上がりして株1000円に
   → その株を売ったら500円の儲け

 あ 検索したら「単に株などを買ったことをロングとはいいません」と出てきた。えダメなの?わからん

Short(売り)=下がったら儲け
株を貸主(金融サービス会社など)から借りてすぐに売る。その金額は貸主に収める。株は借りているのでいずれ買い戻して貸主に返さなければならない。時期を待ち、市場での株価が下がったら株を買い戻す。貸主に株を返し渡していた金額を受け取る。その差額が儲け。

   貸主に借りた株1000円を売って1000円を貸主に渡す
   → 市場の株価が値下がりして500円になった
   → 500円で株を買い戻す
   → 貸主に買い戻した株を返し渡していた1000円を受け取る
   → 500円の儲け 

大変大雑把に言えばこのようなものか。
Shortは他にも空売りとか色々あるらしいがよくわからない。



2022年6月3日金曜日

米ドラマHBO 『Winning time: the rise of the Lakers dynasty』(2022) 全10話:最後に近づくにつれてドラマの凄さがわかり始める



Winning Time | Opening Credits


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『Winning time: the rise of the Lakers dynasty』 (2022)
TV Series/米/カラー
/約59分・全10話/
制作:Max Borenstein、Jim Hecht』
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まず一言。ここのところワタクシの文は長い。長すぎる。おそらく老化のせいだろう。このドラマの感想文を書いた後で思った。適当に文をカットして少しまとめればいいのだが、それはめんどくさい。それも老化だ。だからそのまま載せる。



スポーツ観戦にそれほど興味のない人間には、スポーツ関連のドラマや映画はハードルが高い。スポーツと言っても色々だが、そもそもそのお題のスポーツや時代背景のことを知らなければ、どうやって興味を持てばいい?

というわけで私がこのドラマを見た理由はもちろん旦那A。
去年から大谷翔平さんで初めてアメリカの野球に興味を持ち…、
そこで旦那Aが勝手に録画して見ることになった映画…

映画『マネーボール/Moneyball』(2011): 安く効果的にチームを構築する

…これが結構面白かった…と言ったら旦那Aがどうやら「妻はスポーツモノもいける」と思ったらしく…今度は勝手に70年代後期から80年代初期のアメリカのバスケットボールのドラマを録画していた。

というわけで見始めたHBOのドラマ『Winning time: the rise of the Lakers dynasty』。初回の放送は3月6日。最終話は5月8日。全10話。


よく出来た再現ドラマ70年代後期から80年代初期の時代の雰囲気もリアル。人物達の服装も髪型もよく再現。映像まで多少色あせたように黄色味がかっている。私にとってあの時代は…中学や高校生の頃、雑誌やテレビや映画で見ていたアメリカのイメージのそのまんま。そのイメージが旦那Aにとっては実際のティーンの頃の思い出だ。アメリカ人中年の青春時代の再現。だから彼には懐かしいだろうし初回から面白がっていた。

私にとっての1979年1980年頃のあの時代はディスコでありチャーリーズ・エンジェルであり、チープ・トリックにキッス、エイリアンにスター・ウォーズ、ドナ・サマーにシックにスーパーマン、ザナドゥにレオタード。ブルック・シールズにクリスティ・マクニコル、ジョディ・フォスターにテイタム・オニール、マッケンロー × ビョルン・ボルグ(←スウェーデン人だが彼はセットで出てくる)そしてジミー・コナーズの怒り顔だ。そんなアメリカの文化を遠く日本から見てドキドキしていた。懐かしい時代ですよ。



さてドラマ。私は最初は予想通り苦戦。プロ・バスケットボールのチーム「ロサンゼルス・レイカーズ」の成功物語なのだが、私には全く知識がない。何度も旦那Aに説明を求める。


主人公(の一人)ジェリー・バス/Jerry Buss (John C. Reilly)。彼は不動産業で成功したビジネスマン。彼がNBA (The National Basketball Association) のチーム、ロサンゼルス・レイカーズを買い取ってオーナーになったところからストーリーはスタート。大まかな筋は、彼がレイカーズのオーナーになり、チーム内の様々な事柄を揺さぶって再構築…新しいコーチを雇い選手と契約をしトレーニングをし…そこからチームが勝ち始める。その時にチームと契約をしたのが有名なマジック・ジョンソン/Earvin "Magic" Johnson Jr.。このシーズン1の最後は1980 NBA Championship優勝。そしてジョンソンは新人ながらファイナルMVPを受賞。

実際には、このマジック・ジョンソンが在籍した時代はレイカーズの黄金時代。ジョンソンとカリーム・アブドゥル=ジャバー/Kareem Abdul-Jabbarのコンビが誕生。1979年から1991年の時代はレイカーズの「ショータイム/Showtime」と呼ばれた。


おそらくドラマのシリーズは、これからいくつかのシーズンを使ってこのレイカーズの黄金時代を描くものなのだろう。シーズン2もすでに決定しているらしい。



このシーズン1はその初期、1979年から1980年まで。ジェリー・バス氏がレイカーズを買収してから「ショータイム」が実際に始まるまでの準備期間の話。だから結構退屈な場面もある。

将来有望な学生プレイヤー、マジック・ジョンソンと契約し、有能なコーチJack McKinney氏、Paul Westhead氏、Pat Riley氏を雇いながらチームを構築。新しく契約した若者・ジョンソンがどのようにチームに馴染んでいってチームが出来上がっていくのか。またオーナー、ジェリー・バスのアイデアで「バスケットボールの試合はスポーツイベントとという概念を排除し、エンターテインメントの見世物として捉え」イベントを活性化させていく様子などなど。かなり詳しくレイカーズの成功の舞台裏を見せてくれる。


回を重ねるにつれて少しずつ面白くなる。私に前知識がなかったので最初はなかなか話に入り込めなかったが、レイカーズの「あの時代」に馴染みがあるのであれば、最初からかなり面白いのだろうと思う。

私は最初はこのドラマをマジック・ジョンソンの伝記ドラマだろうと思って見始めたのだけれど、彼の話というよりもレイカーズのチームの話なので混乱した。

全10話を見てやっとこのドラマの意図が理解できた。レイカーズの黄金時代の話なのですね…そういえばタイトルも『Winning time: the rise of the Lakers dynasty』だった。おっとそのまんまじゃないか。

マジック・ジョンソン氏以外、なんの知識もなかったけれど全部見たら面白かった。よく出来た入魂/力技の作品だというのもよくわかる。製作のものすごい情熱とエネルギーを感じる。


まずあの時代の再現が素晴らしい。現代の役者さん達を使っているのにあの時代そのまんま。すごいと思う。なんとなく洗練されていなくて男性も女性もむさ苦しい。英語のscruffyな感じもそのまんま。あの時代は髪型もスタイルも野暮ったかったのだなと思う。みんなタバコを吸う。皆髪形がすごく変。その野暮ったさもリアルに再現。もちろん人物達だけではなく部屋のインテリアなどのセットも風景もそれらしく古い。

脚本の時代再現もリアルなのだろうと思う。あの時代は男性が今よりずっと野蛮(日本もそうでした)。特にプロ・スポーツの世界だからというのもあるけれど、それにしても言葉づかいが荒い。特にコーチの一人Jerry West氏が(脚色なのだけれど)とにかく言葉が汚くて驚く笑。F言葉があまりにも多過ぎて何を言っているのかわからないほど笑(御本人はあれほど口の悪い人ではなかったらしい)。 皆すぐに怒りを爆発させるし、大声を出すし、とにかく荒々しい現場。マッチョな時代。そのあたりの再現もうまい。男性がマッチョなら当然女性との生々しいエロいシーンも多い。ベビー・ブーマーが若者だったあの時代は様々な事がワイルドだった…あの時代のアメリカのそのような話は日本にも色々と聞こえてきていた。

そして脚本がリアルなら役者さん達も巧み。Jerry Buss を演じるJohn C. Reillyや母親のSally Fieldが上手いのは当然。それ以外の人々も全てうまい。それがすごい。たぶんこのドラマで有名な俳優はJohn C. ReillyAdrien BrodySally Fieldぐらいではないかと思う。それ以外はほぼ無名か助演の多い中堅どころ。それなのに全員が1980年頃の人物を自然に演じているのは皆演技が上手いからなのだろう。

特にバスケットの選手達に驚く。元々の選手達に似た俳優を連れてきて…それぞれが役者として上手い。全員上手い。すごいです。そして皆かっこいい。 マジック・ジョンソンのQuincy Isaiahが似ている。Kareem Abdul-Jabbar選手を演じたSolomon Hughesは役者なのに身長が211センチ。そんな高身長の役者さんがいることにも驚く。Norm Nixon選手を演じるのは御本人の息子さん。Larry Bird選手を演じるSean Patrick Smallもそっくり。彼らはおそらくほぼ無名。それなのに役者としてうまい。みんな上手い。ハリウッドの役者の人材のプールがどこまで大きいのか…と驚いた。キャスティングだけでもものすごいドラマだと思う。もちろん俳優を活かすのはうまい脚本。まず脚本が上手いのだろう。



最後のエピソード10は1話ほぼ全てを使って1980 NBA Championshipのゲームを見せる。これが盛り上がる。それにそれまでの皆の苦労を9話分見てきているので大変興奮する。カメラワークも編集も巧み。実際のゲームを見ているよう。うまい。最後は盛り上がって終了。

面白かった。アメリカのプロの力技。ものすごいドラマ。

スポーツに興味の無い人は最初は苦戦するかもしれないが、レイカーズの情報をある程度仕入れて見ればもっと楽しめると思う。9話かけてだんだん馴染んできて10話目は最高に盛り上がった。

またシーズン2も必ず見る。



2022年3月28日月曜日

米ドラマHBO 『The Gilded Age』(2022) 全9話:金か家柄か?人の社会の本質





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『The Gilded Age』 (2022)
TV Series/米/カラー
/約50分・全9話/
制作:Julian Fellowes』
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シーズン1を見終わった。面白かったです。
 

1880年代、ニューヨークのマンハッタン。ドラマの主軸は、

ニューマネーかオールドマネーか?

新興成金か旧家か?

金か家柄か?


それです。そういうドラマ。社交界とビジネス界で、新と旧がそれぞれ札束と家系図を持ち出して殴りあう。そのようなドラマ。
 

テーマはゴシップ系/下世話な人と人のドラマなのですけど、だから面白い。結局は今も昔も人は人を格付けしあって争う…そのようなドラマ。「個人の心理を繊細に掘り下げて人間の真理を描く」などという高尚なドラマではないのだろう。どうかな。

大変ゴージャスでお金がかかっているので、最初はなんだか高尚なお話かと期待したが、内容はぶっちゃけ女子高の女の子達のいじめやライバル同士の戦いとそれほど変わらない。

しかしながら1880年代の米国ニューヨークの歴史など今まで全く興味を持たなかった事柄が知れたのはとても嬉しい。いい脚本。俳優さん達もうまい、大変うまいうまい…見事。素晴らしい。そして富で彩られた画面は大変美しい。楽しい。美術が綺麗。すごく気持ちのいい画面。あの宮殿みたいなインテリアはどこで撮影したのだろう?豪華な衣装。それにニューヨークのあの旧い街並みはどれがセットでどこからがCGなのだろう?…と非常に楽しかった。



★ネタバレ注意


さて話は、家柄か札束か?
      伝統か現実か?



主人公の新興成金の夫婦・ラッセル家。この夫婦は(2月にこのブログでこのドラマのことを書いた時にほんの少し書いた)ニューヨークの大富豪ヴァンダービルト/Vanderbilt 家(アンダーソン・クーパー氏の母方の祖先)をモデルにしているらしいです。このドラマに関するメディアの記事を検索したらいくつか出て来た。
 

Screenrant.comGilded Age True Story: How The Real Vanderbilt Family Was Different 金箔の時代/ギルディドエイジの実話:本当のヴァンダービルト家はどのように他と違っていたのか
Vogue.comThe Real-Life Socialite Rivalry That Likely Inspired The Gilded Age ギルディドエイジをインスパイアしたであろう実際の社交界のライバル競争
Vogue.comThe Obscenely Lavish Vanderbilt Ball That Inspired the Season Finale of The Gilded Age ギルディドエイジの最終回をインスパイアした不愉快なくらい豪華なヴァンダービルト家の舞踏会
E! Online comThe Real-Life Socialites That Inspired Julian Fellowes' The Gilded Age ジュリアン・フェロウズのギルディドエイジをインスパイアした実際の社交界の名士達
Untapped New YorkGILDED AGE FIGHT FOR QUEEN BETWEEN MRS. ASTOR AND ALVA VANDERBILT アスター夫人とアルヴァ・ヴァンダービルトのギルディドエイジ女王の戦い


史実でもヴァンダービルト家は(このドラマの時代に)新興成金、またその手荒いビジネスのやり方から泥棒男爵(robber baron)などと呼ばれて、(実在の)アスター家を始めとするオールドマネーの人々から仲間はずれにされ、ずいぶん冷たく扱われたらしい。しかしそれをものすごい富…札束で皆の顔をバシバシ殴って階級の戦いに勝っていったのだそうな。すごいね。このドラマのラッセル家のバーサ・ラッセルは、ヴァンダービルト家アルヴァ・ヴァンダービルトをモデルにしたそう。

そんなわけで1880年代、オランダ系の旧家のアスター夫人を頂点に存在するニューヨークの上流社交界。このアスター夫人はニューヨークの名士400名のリストを作り、そのリストに入らない新興成金は歯牙にも掛けない。そこに桁違いの大富豪=新興成金・鉄道王のラッセル家が切り込んでいくストーリー。


私の心の奥深くに存在する本音「アメリカは結局…商売人の国」…そのような私個人の偏見があるものだから、以前のエントリーでも私は「オールドマネーとどんなに威張っていても、米国の金持ちは結局本物のヨーロッパの貴族とは元が違うではないか、そんな浅い歴史のアメリカ式富裕層が、新しくやって来た成金を馬鹿にするなんて馬鹿馬鹿しいわ。どっちもどっちだ」などと書いたのですけど、そのせいかどちらに肩入れするわけでもなくどちらの主張も「なるほど」と拝見。むしろ初めて知る事も多く目から鱗。そしてお金ってすごいものだねと驚く。

さんざん社交界から仲間はずれにされ「芋堀り人の娘」と馬鹿にされ嘲笑われて、毎回ほぞを噛むバーサ・ラッセル夫人。しかし彼女の頑張りは賞賛に値する。確かに札束でなんでも動かそうとするのは品がいいとは言えないのだろうけれど、そんなことは言っていられない笑。彼女にとってはオールドマネーの嫌味な女性達に「すみません」とか「ごめんなさい」を言う事は社交的な「死」と同じ。とにかく何が何でも石に齧りついてでも、この社交界の格付けバトルに勝つ。何度も何度もお金をばら撒いて「どうだどうだどうだ…」と、富で買える力を誇示。

「あたしは絶対に負けない!」


その意思の強さが潔い。だんだん彼女を応援したくなる。というのも、そのアスター夫人を始めとするオールド・マネーの女性達が、

驚くほど底意地が悪い


そんなオールド・マネーの彼女達の気持ちもわからないではない。人間とは3人集まれば格付けしあう…そういうもの。しかし嫌な感じなのですよ。しかしこれも人間の本質なのだろう。

世で言う「伝統」や「格式」というものは「新しい風を排除する力」である程度は保たれているという事実も否定するつもりはない。オールド・マネーの彼女達もそれをやっているだけ。それまで(ヨーロッパの貴族をコピーしながら)アメリカの地で数百年培った伝統や品性や格式、それによって保たれる社会の秩序、そして信頼できる馴染みの顔ばかりの社交界での平和と調和を、…荒い手を使って成り上がってきた新興成金(ラッセル家)や社会的ルール違反をした不徳者(チェンバレン夫人)には乱されたくない。だから極端なくらい新入りやルール違反者には排他的になる。それもなるほど確かに理解できる。

一件ゴシップ的な下世話なドラマ…だとは言いながらも、このドラマは実は人間の社会の本質を描いているのかもしれませんね。この文章を書き始めるまでは考えもしなかったけれど。


私はラッセル夫人も、ガチガチにお堅いヴァン・ライン夫人(アグネスおばさん)もどちらも嫌いじゃない。どちらの気持ちも解かるしどちらの立場もリスペクトする。外野から見る限り…もしそれぞれのキャラクターに自分がなったとしても、彼女達と同じように振舞うのだろうと想像する。もちろん彼女達のあの世界の中に入りたいとはみじんも思わないが。

ただよく頑張っているのはラッセル夫人。その頑張りが潔くもありみっともなくもあり。それが彼女の人間臭い魅力にも思えてくる…気が強くて激しくてぶしつけで傲慢に振舞えば振舞うほど彼女が魅力的に見えてくる不思議。応援したくなる。彼女は肉感的でセクシーだし。

楽しめた。ドラマとしてすごく面白かった。


ところで若いキャラクターマリアン・ブルックと優秀な黒人女性ペギー・スコットの話はあくまでもスパイス的なサイド・ストーリーでしょう。マリアンの恋の行方で視聴者はハラハラし、ペギーの話ではポリコレの箱をチェックする。

マリアンとトム・レイクの恋バナは…怪しいとは思っていたが…。最後はトムを(昨日のアカデミー賞のウィル・スミスばりに)平手打ちをして打ちのめして欲しかったわ。こちらも鼻息が荒くなった。ジュリアン・ソレルか。ああいう男には消えて欲しい。自滅してほしいね。しかしもちろんシーズン2にも出てきそうだ。(余談ですけど私は昨日のウィル・スミスは超最高かっこいいと思う。奥さんを守った男の中の男だわ。『Drive My Car』おめでとうございます)

それからペギー・スコット。正直な話ペギーの存在は少し無理があると思った。(ハリウッド的に)ポリコレの箱をチェックするために無理に押し込んだキャラかと思う。もちろん優秀な彼女が問題だということではない。当時から米国にはブラック・エリートと呼ばれる人々が存在し、彼女のような優秀な女性が当時のアメリカで認められていた歴史があったこと(e.g.: 学校の先生で小説家のJulia C. Collinsなど)を知る事ができたのはよかった。彼女の話だけで別のドラマがつくれますね。

The Grio.comWhat’s the real story behind The Gilded Age’s Black heroine? ギルディドエイジの黒人ヒロインの本当のストーリーとは

しかし当時の現実を考えれば、あのお堅いヴァン・ライン夫人(アグネスおばさん)が、有色人種のペギーを優しく受け入れて秘書として雇い信頼しながら、一方で通りの向かいの白人の新興成金・ラッセル夫人を忌み嫌うのは、どうもリアルではない。私には100年以上前のアメリカの上流階級の白人が有色人種を同等に扱ったなどとはみじんも信じられない。未だに存在する白人至上主義の現実に対するプロテストを踏まえて書いておこう。もちろん個人的な意見で、フィクションのドラマとしてはなんの問題もないけれど。これはもう少し調べる必要がありますね。1880年代当時、実際に有色人種に親切なハイソな白人は存在したのだろうかと思う。


というわけで様々な思いが頭の中を駆け巡った面白いドラマでした。メインの主人公たちは架空の人物だけれど、描かれた社会は1880年代当時ニューヨークに存在していたもので、実在の人物や家系もいくつか出てくる。まずそんなニューヨークの歴史を少し知ることができたのは大変有り難い。調べるともっといろんな事が出て来て面白い。ドラマがゴシップ的で多少下世話に感じても、結局歴史はいつの時代でもあなたや私と同じ「人間」が作っていく。それが時代物の面白さでもある。このドラマは米国でも高評価でこれからシーズン2、3と繋がっていくのだろう。シーズン1で答えが出なかった話も沢山ある。これからどのように話が繋がっていくのか楽しみに待ちましょう。


ドラマHBO 『The Gilded Age』(2022) ~Episode 4:己の中のスノビズムを刺激される ---2022/2/22



2022年2月22日火曜日

米ドラマHBO 『The Gilded Age』(2022) ~Episode 4:己の中のスノビズムを刺激される





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『The Gilded Age』 (2022)
TV Series/米/カラー
/約50分・全9話/
制作:Julian Fellowes』
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今アメリカで放送されているHBOの歴史ドラマ 『The Gilded Age』。初回の放送は2022年1月24日。全9話。現在第5話まで放送されている。

製作・脚本は、英国 ITV のヒット作 『ダウントン・アビー/Downton Abbey』 のジュリアン・フェロウズ/Julian Fellowes氏。彼が今回はアメリカ・ニューヨーク市の1880年代の物語を手がける。

現在視聴中。毎週月曜日に放送されるのだが、週末に録画を視聴するので今うちでは4話まで見ている。



時代は1880年代。ニューヨーク・マンハッタンの一等地。その地には、家族の歴史を200年以上遡れるオランダ系の旧家、戦争の英雄を生み出した英国系の名家など、(アメリカでの)旧い家柄を誇る人々が裕福な暮らしを送っている。彼らは数世代続く世襲制の財産「Old Money」を持つ人々。彼らは自らの社交サークル/ハイ・ソサエティーの枠の中で、富と名誉をベースに貴族のように振舞う。

アメリカでは南北戦争(1861年~1865年)の後、急速に経済が発展した。時代の波に乗って新しく成功し「New Money」を持つ大富豪が、その閉じた堅苦しい「Old Money」のソサエティーに金の力で切り込んでくる。

ペンシルバニア州で育った箱入り娘・マリアン・ブルック/Marian Brook が両親を亡くし、父方の(オランダ系旧家に嫁いだ)未亡人の叔母・アグネス・ヴァン・ライン/Agnes van Rhijn を訪ねてニューヨークにやってくるところから話は始まる。最初はマリアンが主人公かと思わされるが、実際の話のメインは1880年代のニューヨークのハイ・ソサエティーの様子を描く事だろう。

第4話まで見た印象は、旧家と新興成金の戦い。それが面白い。ドロドロしてます。(あまりにも偏見がなさ過ぎて現代っ子がそのまま19世紀に迷い込んできたような)マリアンはあくまでもサイド・ストーリー。話の中心ではない。

見所は、新興の成金・鉄道王/railroad tycoon のジョージ・ラッセル/George Russell が、いかに旧家+名家ばかりで排他的なニューヨークのビジネス界に切り込むのか、そして彼の妻 Bertha Russell がいかに排他的で堅苦しいアッパーな女性達の奥様社交サークルに切り込んでいくのか。

1880年代のニューヨークを様々な角度から描く力作。今のところ私にはニューヨークの歴史の学びにもなっていて面白いです。第4話まで見た感想は「面白い」とだけ書いておこう。その印象がこれから変わることもないだろうと思う。基本的に描いているのはゴシップ系の人間ドラマだけれど、レベルは高い。面白いです。これからも期待。


★ネタバレ注意

最初は狭い世界の中の人々の下世話などんぐりの背比べ話かなと思いながら、このドラマが面白いのかどうか探っていたのだけれど、第3話で成金の鉄道王ラッセルが、意地悪な旧家+名家の排他的カタブツたちを札束で殴り始めた辺りからドラマとして面白くなってきた。旧家+名家か?それとも鉄道王成金か?…どちらにも肩入れすることはない。しかしどちらの心も理解できる。どちらも結構下衆なのですよ。だから面白い。さてこれからどうなるか。


ところでこのドラマの最初の数話を見ていてとても違和感を感じたことがある。それは、このドラマの名家+旧家の方々が…ニューヨークだかニューアムステルダムだか知らないが…ずいぶん偉そうに振舞っていること。

というのも彼らもルーツをたどれば、元々はたった250年~200年ほど前に、ヨーロッパの堅苦しい封建制下での階級社会や宗教弾圧から逃げ出してアメリカ大陸に渡った無一文の人々。貴族なんてとんでもない ㊟1彼らのほとんどは欧州の貴族とは血縁的な繋がりがない。そんな人々がアメリカで何らかの形で成功し大富豪になった。

もしそんな彼らが新しく自由な社会を作ったのならそれは素晴らしいこと。しかし現実には、そのような(数世代続く)アメリカの成り上がり者達は、また(自分達が逃げ出してきたはずの)旧世界ヨーロッパの階級社会と全く同じサークルを作り、偏見に満ちた狭い世界で格付けをし合っている。なんだか…おかしいよね。1880年当時のアメリカ人って結局全員が成り上がり者 ㊟2 なのに(個人的な意見です)。

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追記 ㊟1, ㊟2:訂正、少し調べたら、私の無知でした。「Old Money」の人々とは、例えばアメリカがまだ英の植民地だった時代に、英国から事業主としてやってきた裕福な英国人で、独立戦争(1775~1783)以前に本国との取引で富を成した人々。その子孫が自らを「Old Money」と呼び、南北戦争(1861~1865)以降に財を成した「New Money」の新興成金と区別していたらしい。彼らは旧世界の貴族ではないかもしれないが無一文ではなかった。その「Old Money」の人々が初期のアメリカで政治家や社会のリーダーとして国を牽引したのだそう。 
アメリカの人々には大変失礼な嘘(私の思い込み)を書いて申し訳なかった。このアメリカの歴史は面白いので、もう少し調べようと思う。
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…なぜそのようなことを私が思ったのか。なぜなら(日本人をはじめ)旧世界の人間は誰でも皆過去との長い繋がりを持つわけで、それはアメリカ以外の旧世界ならどこでも同じ。(家系図を持ち出すまでもなく)旧世界の国の人間は、誰にでも国や土地に根ざした何百年~1000年を超えるルーツがあり、その文化や伝統、しきたり、社会のルールやしがらみを受け継いでいるのがあたりまえ。旧世界の人間は現在と過去に折り合いをつけながら生きている。

しかしそれがないのがアメリカ…彼らは皆なんらかの理由で旧世界を捨てた人々で、人の土地を奪って定住し、いつしか旧世界に反抗、独自の社会を発展させ富を成した人々。新しい世界をつくるはずだった人々。それなのにそんな希望に溢れた成り上がり者達が、また(新しい世界で)旧世界と全く同じ階級社会を作り上げ、自分達よりも少し後からやって来た新しい成り上がり者を排除するという皮肉。 このドラマを見ていてそんな馬鹿馬鹿しさを感じたし、もちろんだからこそ面白いとも思った。人間とはそもそもそういう生き物。


このドラマの脚本家は英国人のジュリアン・フェロウズ氏。もしかしたら彼もちょっとそんなことを考えているのではないかと思った場面が第4話で出て来た。オランダ系旧家に嫁いだ(マリアンの)叔母アグネス・ヴァン・ラインの家で働く英国人のバトラーが、通りの向かいの豪邸に住む新興成金のラッセル家にやってくる。そしてその家のテーブルセッティングを見て「うちは、こういう風には並べませんね」と違いを指摘する。正式な英国式とは違うとダメ出しをする。そうするとラッセル家のアメリカ人のバトラーはちょっと不安そうな顔をする。どんなに成金の大富豪がアメリカ人のバトラーを雇っても、近所の旧家の英国人のバトラーには敵わない。そんな格付けを必死に探っている人々。しかしそんな成金のラッセル家はフランス人のシェフを雇っていたりして…。

それを書いたのは英国人の脚本家。う~む…面白いね。こういうものも当時のアメリカでは結構リアルだったのかもしれませんよね。


2010年から英国 ITVで放送された『ダウントン・アビー/Downton Abbey』は、衣装やセットをものすごく凝っていたと聞いている。このドラマもその辺りのクオリティーを下げないようにしているだろうと期待できる。実際にセットや内装、衣装、家具…街の様子、諸々…ゴージャスです。

俳優さん達も素晴らしい。とにかく今楽しんで見てます。途中経過を記録しておく。


大まかなニューヨークの歴史
ヨーロッパ人の入植は、オランダ人が1614年にマンハッタンの南端に毛皮貿易のために建てた植民地が始まり。後にニューアムステルダムと呼ばれる。1664年イギリス人が街を征服、ニューヨークと名付けた。ニューヨークはイギリス帝国の支配の下で貿易港としての重要性を増す。独立戦争の間は大きな戦闘が繰り返され1783年の終戦までイギリス軍の占領が続いた。1790年にはアメリカ合衆国最大の都市へと成長。以降発展し続ける。1873年にセントラル・パークが開園。1898年にいくつかの郡を合わせて現在のニューヨーク市が形成される。(wikipediaより)

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余談ですがCNNやCBSの仕事で有名なジャーナリストのアンダーソン・クーパー氏の母親は、ヴァンダービルト/Vanderbilt 家の出身。彼の5世代前の祖父コーネリアス・ヴァンダービルト(1794年 - 1877年)は19世紀に海運業から始めて鉄道王となり、世界一の大富豪の一人…ヴァンダービルト家は歴史上7番目に裕福な一族となったらしい。その祖先はオランダのユトレヒト州の農民。1650年にオランダからアメリカのオランダ植民地 New Netherland に年季奉公人としてやってきた移民だったそう。このドラマで言うところのオランダ系の旧家か…と思ったらそうではないらしい。1880年の時点では、このコーネリアスが1830年代から彼一代で築いた富は成金の「New Money」とみなされたらしい。「Old Money」とは1880年以前に何世代も受け継がれてきた富を持つ一族=資産家だそうだ。(上に書いた追記を参照)



2021年12月20日月曜日

米ドラマHBO Max『And Just Like That...』(2021) Episode 1 & 2:50代・女リアル?






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『And Just Like That...』 (2021)
TV Mini Series/米/カラー
/約42 - 44分・全10話/
制作:Michael Patrick King, Darren Star』
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米のサブスクのサービス HBO Maxでリリースされているドラマ。12月9日公開スタート。うちはHBO Maxに入っていないので見る事が出来ないのだけれど、ドラマのプロモーション用に第1話2話がテレビのHBOチャンネルでフリー放送されているのを発見。録画して視聴。


このドラマ、かの有名な『Sex and the City』のその後の話。
女性達は50代半ば。

元々の『Sex and the City』は、1998年から2004年までの6シーズン。当時のニューヨークの30代半ばの裕福な女性達の日々を描いて大人気だったドラマ。主演のサラ・ジェシカ・パーカーが1965年生まれなので、メインの4人の女性達もだいたいそれぐらいの年齢…2000年頃の時点で皆35歳前後だろうか。

彼女達は皆それぞれ仕事もしっかりと…恋も盛んなニューヨーカーの裕福な女性達。スタイリッシュでハイソな生活を謳歌する自立したニューヨークの女性達のドラマは世界中で大ヒット。私もシーズン3か4ぐらいから見ていた。

このドラマは、最初は30代の女性達の自由なセックスライフが主題だったらしいが(私は見ていない)、シーズンが進むにつれて30代の女性のリアリティを描くようになった

派手な生活をする美しいニューヨークの女性達も、30代後半には己の年齢を気にするようになる。独身女性の孤独と老いへの恐れ。母になる者もいれば、大病を患うものもいる…そんなリアルな30代後半の女性達のストーリーは、描かれたキャラクター達が私と同世代だったこともあって実に面白かった。毎週真剣に見た。このドラマの女性達と共に笑い、心配し、恐れ、時には涙した。心震えた。

2000年頃のニューヨークの成功した女性達。
(1980年代ヤッピーの時代の男達に15年ほど遅れて)2000年当時30代半ばの彼女達は、物欲と性欲を満たし人生を自由に楽しんでいるように見えた。派手なニューヨーカーの女性達のドラマは見て楽しかった。


そんな彼女達が2021年、50代の中年になった。


さて、どうしよう。HBO Maxをサブスクするつもりはないし(Netflixで十分だ)、いつかHBOのテレビチャンネルに降りてくる事を希望するしかないが、私はいつこのドラマを全10話見ることができるのだろう?

今は私はプロモ用に公開された1話と2話しか見ていない。だからあまり一方的に批評を決定してしまうわけにもいかないのだろう。



しかし…これは…、結構イタいね。イタタタタタタ…。結構キツイ

…と思ったのは第1話。オリジナルのメインの4人のうち、一人欠けた3人でストーリーは始まる。一番明るくて派手で面白いサマンサはロンドンにいるそうだ。


さてこの3人、どうやら全く変わっていません。ノリが以前と同じ。ミランダは30年間勤めた仕事を辞めて大学院に通う学生。シャーロットはティーンの女の子2人のお母さん。キャリーは子無しの既婚(夫は‘BIG’)で、時々若者向けの性情報ポッドキャストに参加。それぞれ活き活きとやっているように見えるけれど…、

(…最初からとってつけたような薄っぺらい台詞の脚本…不自然すぎて耳を疑う。そんな会話をする中年夫婦はいねぇよ…気持ち悪いわ…はとりあえずおいといて…)

現在50代半ばの彼女達、実はどうやら年をとり過ぎて、今の時代や若い世代の人々の常識やスタンダードについていけず、度々違和感を感じたり、居心地悪くなったりしている様子。


そうなのだ。時代は変わったのですよ。今はもうマノロの靴やエルメスのバッグを集めてニヤニヤする時代ではないのかもしれません。ニューヨークでさえそうなのかもしれないのだな…。 シャーロットの娘は綺麗なブランド物のドレスを着たがらないし、街の人々の服装も以前よりカジュアルでクリエイティブ。それに彼女達の周りには以前よりももっと様々な人種や多様な性的指向の人々も存在している。

たぶんそれらの描写は、今のBLM運動sustainability志向LGBTQの一般化(知識上では)や、#MeTooなどなどを反映し、今の50代の彼女達の違和感や戸惑いを通して、今の時代は変わったのだ…2000年頃とは違うのだと強調しているのだろうと思う。 しかしそれにしても私と同世代の50代の彼女達が、それらの「今のスタンダード」に対して妙なリアクションをするのも不自然に思える。

ミランダはなぜ、ブレイドの髪の女性を見てバリバリに(反)偏見的な反応をするのか?…BLMの時代に「正しい白人」であろうとして過剰反応をする姿が大変見苦しく不自然。 なぜキャリーはポッドキャストで露骨な性テーマの会話に戸惑うのか?…自分が出る番組の傾向ぐらい事前にわかっているだろうに(ノリに付き合えないのなら参加しなくてもよい)。 なぜ彼女達は今の2021年の時代に、いかにも20年前からそのまま抜け出してきたようなぎこちない反応をしているのだろう? おかしくないか? 特にミランダの人種に対するリアクションはかなり不快で驚く。

50代半ばの彼女達は今の世の中に馴染んでいないのだろうか? それはおかしい。彼女達はあのニューヨークに長年住み続けている女性達なのだ。それに今は『RuPaul's Drag Race』が人気番組の時代じゃないか。なぜだ。なぜ彼女達はそんなに時代遅れに見えるのだろう?…なぜ彼女達は今の時代に必死に追いつこうとしている…無理をしているように見えてしまっているだろう?


人間は、20年間全く変わらないものではないと思うぞ。好みも意識も変わる。
それに人間50代半ばにもなったら少しは落ち着くものではないか。


例えば(自分語りで申し訳ないが)…私にとって、人種とは…LGBTQとは…なんだろう。もう今は全く違和感のない当たり前のこと。みんな違ってあたりまえ。

それからなによりもモノに対する意識が変わった。2000年ぐらいまでは私の中にも確かに存在したConsumerism/コンシューマリズム/消費主義的な志向も、今はほぼなくなった。そのほうが意識が高くてお洒落だからとか…そういうことではなくて、

ただ私は年を取った

それだけの話。

バッグ、ドレス、靴…嫌いじゃないけれどもう必要を感じない。物欲が極端に減った。特にこのコロナでモノに対する意識は180度ぐらい変わった気がする。

必要の無い物はいらない

そうなのだ。いやミニマリズムとか…そういうつもりではないけれど、物欲が減ったのはまず私が年を取ったからだろうと思う。 


それは私だけではない。おそらく世の中もそちらの方向に向かっている。「sustainable云々…志向」などなど…無駄な消費を止めてモノを大切にする生き方は、今の若い人達にはもっとあたりまえのことになっている。若い人達は私達の世代に比べてもっと環境に対する意識も高いと思う。

あらためてこのドラマを見て、『Sex and the City』の女性達の世代…1965年前後生まれの世代が謳歌した1980年代1990年代の消費主義と、都会ならではの「見栄の文化」がいかに古臭く見えるのかにも驚いた。

無駄はいらない。 今の若い世代の人達はもっと現実的に自分達の将来を考え、思慮深く彼らの未来をもっといいものに…気持ちよく暮らせる時代しようと皆が健全な意識を持っているのではないか。時代は変わってきている。

あ~そうか…インスタの「映え…文化」「インフルエンサー文化」あれは今も「見栄の文化」だな。若者も人それぞれか…。

(考え始めたらわからなくなってきた。私の勘違いかもしれぬ)



ともかく、そんなわけで20年前とちっとも変わらない50代後半の白人のリッチな有閑おばさんたち3人を見て、なんだか正直ゲンナリしたのはしょうがない。それは時代が…私が変わったからなのだろう。


しかしこれは制作側が意図したものかもしれません。とりあえず、第1話で…お洒落で相変わらず浮き足立ったおばちゃん達を見せて「彼女達はまだ同じ事をやってるのか」と視聴者たちを呆れさせ、その後でどっかーんと爆弾を落とす。第1話の最後。びっくりですよ。こわいわ。マジ。

というわけで、第2話から急にトーンが変わった(もちろんキャリーはキャリーだからスタイルを諦めるはずは無いけれど)。 しかしドラマとしては掴みが上手い。これは続きが見たいですもん。しかしこれからどうなるんですかね。私はいつこのドラマの続きが見れるようになるのだろう。


いろいろ書きましたけど、年を取ると、以前は「良」と思っていたものに全く魅力を感じなくなるというのもあるのだな…と思わされた。この同世代の女性達のその後、見たいかな。彼女達は変わるのか?どうだろう。 きっとキャリーはまた新しい恋人を見つけるんだろうな。そういうドラマですよね。しかし女55歳。どうなのよ。人間のエネルギーにも限りがあるだろう。元気じゃなきゃ恋もできないだろう。恋愛が肉体ばかりのものだとも思わないが、しかしキャリーさんは男性に知性や落ち着きを求める人でもないだろうし。だからどうなるのだろう。そのあたりを、できるなら事細かにリアルに描いてほしいと思った。


年と取るって、人間みんなに平等に訪れて、みんなそれぞれ初めての経験。だからみんな戸惑ったり苦しんだり、諦めたり、かえって自由になったり、ふっきれたり…いろんな形の老い方があると思う。55歳ぐらいなら、もう一度花を咲かせるもよし。達観して仙人になるもよし。 みんなそれぞれの女性の老い方を見せてほしいと思う。いつか第3話以降が見れる日まで楽しみに。

彼女達の派手なカラフルなドレスはちょっといいな。
私も派手な色が着たいね。



2021年12月6日月曜日

米ドラマFX Networks『Impeachment: American Crime Story』(2021) シーズン3:事実は小説よりも奇なり・異様な政治茶番と女性達の怒り






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『Impeachment: American Crime Story』 (2021) 
TV Series-Season 3/米/カラー
/約42分・全10話/
制作:Scott Alexander, Larry Karaszewski, Sarah Burgess, Ryan Murphy 』
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久しぶりに気合の入ったドラマを見た。面白かった。

有名な「クリントン大統領のセックス・スキャンダル」…一般的にそう呼ばれている事件。

まずこのスキャンダルは、おそらく真面目なアメリカ国民にとっては「恥」なのだろう。現職の大統領が若い娘と不倫をし、その関係の詳細を白日の下に晒され…。普通の真面目なアメリカの中流階級の市民にとってこの事件は、もう二度と話題にしたくない「アメリカの恥」なのかもしれないと外国人の私は思う。アメリカの振り返りたくない恥…だからこのドラマはアメリカの真面目な市民にとって、公正な評価は難しいのではないか。

事実は小説よりも奇なり

まさにその通り。一般的にこの事件がそう呼ばれるように…上の文でも「セックス・スキャンダル」と書いたが、この一連のドタバタは、実は「クリントンの浮気」そのものが問題ではない…ということを私はこのドラマで初めて知った笑。



この事件がメディアに出るようになった頃、私は英国に移住してまだ数年目で、事の内容を詳しく知ることができなかった。メディアのこの事柄に関する記事もほとんど読まなかったし、たとえ読んだとしても当時の私の英語力では理解できなかっただろうと思う。ただ人々の会話には上っていたので多少の事柄は聞いていたが、私はてっきりクリントン氏が若い女の子と不倫をしたから大問題なのだろうと誤解していた。そして「アメリカの大統領は不倫も出来ないのか。不倫ぐらいでそんなにおおごとになるなんて、アメリカって厳しいね」などと、間違った解釈をしていた。

時の世界一の権力者が小娘と不倫をするだけで大問題なの????



実際の問題とは…、

現大統領のクリントン氏が、過去の女性(ポーラ・ジョーンズ)のセクハラ問題での裁判で、証人として呼ばれた別の女性(モニカ・ルインスキー)との現行の関係を問われ、「やっていない」と宣誓供述で嘘を述べ、「いや嘘をついているだろう」と問われれば、「その行為はジョーンズとの裁判で定義された性行為の定義には入らない」などと、みっともなくさんざん屁理屈をこねたあげく、結局…決定的な証拠(ドレス)を提出されて、その関係を認め司法妨害罪偽証罪(法律により宣誓した証人が虚偽の陳述(供述)をすること)…を問われ、下院で弾劾/Impeachment が実施されるまでに至った事件。このドラマはその経過を再現したもの。ちなみにクリントン氏は上院で無罪になり大統領の職を満期まで務めた。



問題は大統領の偽証罪だった。う~ん…それにしても厳しいな。宣誓ををしたら何事も絶対に事実を言わねばならない、嘘の供述をしたら逮捕されて刑務所行きになる…ということも、私は恥ずかしながら初めて知った。偽証罪は大問題で、それを現職の大統領がやった。それが問題。


ここで一応書いておかねばならぬだろう

大統領の「不倫」は犯罪ではない


ただクリントン氏の運が悪かったのは、その偽証罪を問われた内容が…若い女性とのお楽しみだった…という。かっこわるい笑。 



いや…そもそもおかしいのは、大統領の偽証罪を問う内容が、例えば大統領が企業から賄賂を受け取ったとか、どこかの国と裏取引をしていたとか…「政治家らしい嘘と罪」を問うためのものであるのならともかく、若い女の子との火遊びで「やったのか、やらなかったのか」の問いで、そんなどうでもいいことを暴くために、議会に雇われた独立検察官のチームが、国民の税金($52 million/約52億円~60億円くらい)を使い、長い時間(4年間)をかけ、FBI捜査官まで使ってとことん調べつくし、そして調べ出た結果(大統領と女性の性行為の生々しい詳細)を独立検察官のオフィスと議会が、公式なリポートとして誇らしげに世間に晒してしまう。

それがいかに

異常

なことだったのか。それがよくわかるドラマ。


クリントン氏にフェアであるように一応書いておこう。彼は非常に頭のいい人で、政治家としてもやり手のできる男だったと聞いている。もう私達には十分わかっていることだけれど…過去のどの大統領にも完璧な人物はいない。どの大統領も長所も短所もある皆と同じ人間なのだ。誠実であり過ぎれば政治力の弱い大統領かもしれないし、カリスマに溢れて強そうな大統領は、はたして危険な独裁者にもなりうる人物かもしれない。クリントン氏は歴代の大統領と比べても頭脳派の…悪くない大統領だったと聞いている。

しかしながらそんな彼は…どうしようもないほど女性にだらしがなかったのですよね。彼は心の底から女性にちやほやされるのが好きで、ご本人もチャーミングでカリスマに溢れ女性の扱いがうまいからモテて、病的なほどに女性といちゃいちゃするのがやめられない。英雄色を好む…彼もまた過去の時代に存在した人物で、まぁなんと言うか…今の常識だけでは一方的に彼をいいとも悪いとも言えないのかもしれないとも思う。ただ奥さんは大変。それにこの事件での彼はとにかくみっともなかった



このクリントンのスキャンダルの一連の大騒ぎのすごさは、
個人の小さな声から発した問題が、猛烈なスピードで追う者(独立検察官)と逃げる者(大統領)のエゴの戦い、同時にそれがアメリカの政治の戦いに変化していったことだろうか。

…信じられないようなドタバタ。…ありえないほどの偶然と、登場人物達それぞれの行動の意図しなかった結末。そしてまた、事を不必要に「おおごと」にしようとした「外野の者達(メディア)」にとっては…これ以上ありえないほど都合のいいタイミングが重なり続けて、結果…どこまでも大きく大きく、まるでバケモノのように膨れ上がった「大統領の浮気問題」。その肝心の大統領はみっともなくいい訳をして逃げ回り、周りの人々を傷つけ、失望させ、恥を晒し続けたという。

とんでもなく馬鹿げた茶番

まさに事実は小説よりも奇なり。



悪いのは、政治の派閥争い…現職の大統領を引き摺り下ろそうとする政敵(共和党)、その周りに群がるハイエナ達…弁護士、煽るメディア、権利活動家。そして無慈悲に女性達の尊厳を踏みにじり続ける「力のある者達」…独立検察官のチーム…のやり方と手口。

いつしか現職大統領の偽証罪を証明する戦いが、
大統領と独立検察官の醜いエゴの張り合い、になってくる。

どちらが勝つのか?

クリントンか、ケン・スターか?

そんなくだらない男の意地の張り合いに勝つために、独立検察官ケン・スターとそのチームは、リンダの録音テープとモニカの証言による「大統領と若い娘のお楽しみの内容」を事細かに調べつくし、それを白日の下に晒し晒し晒しつくす。そこに政敵とメディアのハイエナ達が群がって騒ぎ立てる。酷い。ひどい。本当にひどい。

私がこのドラマで一番の怒りを感じたのはケン・スターとそのチーム。国民の税金を使って何をやっているのだ。 それにそもそも彼等がこのルインスキーの件の前に調査をしていたビンス・フォスターの死の件や、ホワイトウォーター疑惑はどうなったのだろう?

そして自分の保身と、なによりも「奥さんが怖い」ために、嘘をつき続けたみっともない大統領ビル・クリントン。もし彼が最初に「私がやりました。ごめんなさい」と言っていれば、モニカやリンダやヒラリーはあれほど苦しむこともなかっただろうに。(それが可能だったのかどうか私にはよくわからないけれど)



そして傷ついた女性達

それがこのシーズン3の主題だろうか。

夫の欲により表舞台に引っ張り出され、彼女の「個人的な過去」が国を引っくり返すほどの大問題の引き金となった…ポーラ・ジョーンズ
(一般的に見て)大統領を陥れた浮気の相手/または権力者に利用された犠牲者。しかし事実は、大統領にただただ一途に恋をしていた若い女性…モニカ・ルインスキー
犯罪ギリギリの行動(会話の録音)で友人を売った(裏切り者)リンダ・トリップ。しかし彼女にも、権力者の悪を暴き正したい/不誠実な男を罰したい…という彼女なりの正義感があった。手段は最悪だったけれど
夫に裏切られ、激昂し、追いつめられ、それでも夫をサポートし続けた強いヒラリー・クリントン


このドラマをよく見てそれぞれの状況を理解すれば、これら4人の女性達を一方的に非難する者は少ないのではないかと思う。

このドラマの目的は、このドラマに登場する実在の女性達の苦難を克明に描くこと。彼女達は男達の抗争と政治の派閥争いの道具になり、メディアに翻弄、利用され、世間に傷つけられた。彼女達は全員が犠牲者であり、そこから立ち上がったサバイバー達でもある。このドラマは女性のためのドラマなのだろうと私は受け取った。


これほど事細かに、たった25年ほど前の事件を再現して、全体にバランスよく、当事者の女性達を誰も一面的な悪者には描かない。それぞれの女性達の立場と心を描き、視聴者が納得できるそれぞれの言い分を公正に描く。悪役とされるリンダ・トリップにさえ、彼女なりの正当な言い分がある。…誰も悪者ではない。その描き方の上手さに驚いた。

起こったことの全てをドラマで再現して善悪の判断は視聴者に委ねる。それが主旨だろう。しっかり作りこんで最初から最後まで手を抜かない…制作者側の熱意を感じる。



そしてだからこそ度々描かれる女性達の怒り(見事な脚本)。

女性達の沢山の怒り。沢山の怒鳴り声。絶叫。 第8話のヒラリーの激昂に大きな拍手をし、第9話のモニカの涙に共に泣き、第10話で明かされるリンダの正義に納得し、そして9話のポーラの夫への怒りに共にこぶしを振り上げる。

…そのような女性達の怒りの描写には、このドラマのもうひとつの主旨……男社会の中での女性の扱われ方…女性の尊厳のあり方について考えさせる意図もうかがえる。女性達が怒りの声を上げる…このドラマは今の #MeToo の時代の女性の目線を反映させたドラマでもありますね。今だから描けたドラマ。

私がこのドラマを見て、当時の権力者やメディア、公的オーソリティー全般のやり方に疑問を持ち、反感を覚え、また政治的な戦いに(都合のいいコマとして意図せずに)巻き込まれた女性達と共に泣き、怒り、その苦難に心を寄せるのであれば、おそらくこのドラマの制作の意図は達成されたのではないかと思う。


全編に渡って、法律関連の言葉は難しいし、一度見ただけではわかり辛かったが、ipadで言葉を調べながらゆっくりと二回目を見直したらますますストーリーに引き込まれた。ドラマとして最高に面白かった。こんなに必死になって理解しようとしたドラマは珍しいかも。


全体の構成は、

第1話 の冒頭に…1998年、モニカ・ルインスキーがFBIエージェントに拘束されるシーン。その後は、過去からそこに至るまでの経過が第6話まで細かに再現
第6話 で第1話の冒頭のオープニングをリピート、ストーリーはそこから面白くなる
第8話 ではクリントン氏とケン・スター独立検察官が対峙。夫ビルに怒りを爆発させるヒラリーに大きな拍手! ←このエピソードで傑作決定
第9話 のモニカ・ルインスキーの大陪審での証言。モニカ役のBeanie Feldsteinさん…彼女はいい女優さん。そしてポーラー・ジョーンズも夫に怒りを爆発させる
第10話 特別検察庁がスター・リポートを世間に晒す。そして下院での大統領の弾劾。それぞれの女性達のその後。リンダの正義感の理由

6話までは事件までの経過。見所は6話から。ストーリーがどんどんエスカレートしていく。


4人の女優さんたちが本当に素晴らしい。ものすごい力技。彼女達を見るだけでもこのドラマには価値がある。その力を引き出す上手い脚本。

政治のドラマ。そして女性に向けられたドラマ。脚本も演出も俳優さん達の演技も、全てが上質。ものすごいものを見た印象。



余談だが、私には法律関連の言葉の勉強になった。Impeachmentはトランプさん時代に聞いていたが、deposition、subpoena、perjury、grand jury、testimony、affidavit、indictmentなどなど…知らない言葉の勉強になった。


このドラマのエグゼクティブ・プロデューサーはライアン・マーフィー他。またエグゼクティブ・プロデューサーとメインのライターに Sarah Burgess。そしてモニカ・ルインスキーさんご本人がプロデューサーとして参加。彼女側のストーリーが描かれている。


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based on the book “A Vast Conspiracy: The Real Story of the Sex Scandal That Nearly Brought Down a President” by Jeffrey Toobin.

Executive producer: Scott Alexander
Executive producer: Larry Karaszewski
Executive producer: Ryan Murphy
Executive producer/writer: Sarah Burgess
Co-producer: Monica Lewinsky


CAST
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Sarah Paulson
as Linda Tripp
Beanie Feldstein as Monica Lewinsky
Annaleigh Ashford as Paula Jones

Edie Falco as Hillary Clinton
Clive Owen as President Bill Clinton

Dan Bakkedahl as Kenneth Starr
Darren Goldstein as Jackie Bennett
Colin Hanks as Mike Emmick