2018年1月23日火曜日

映画『シェイプ・オブ・ウォーター/The Shape of Water』(2017):『スプラッシュ』の2017年版ダーク編


 


 
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The Shape of Water2017年)/米・加/カラー
123分/監督:Guillermo del Toro
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去年の年末に鑑賞。

まぁ…これは『スプラッシュ(1984)』ですね。人魚がダリル・ハンナちゃんだったのが、今回はリアルに不気味な半漁人に替わった。男女の役割もひっくりかえって人魚が男になった。恋をするのは人間の女性。うー…。

これもファンタジーなんですよね。しかしこれは納得できない。

キモチワルイ映画。


★あらすじ
60年初期。研究施設に送られてきた半漁人と掃除係りの女性が恋に落ちる。


この映画、アメリカの批評家の間ではものすごく高評価。Rotten Tomatoesでは去年の一時期94点。現在92点。だから見に行った。その高評価の理由はどこにある?


●いいところ

・セットと雰囲気がいい。
凝ってます。ちょっと前のアート系フランス映画や英国映画にありそうな演出。テリー・ギリアム、ジャン=ピエール・ジュネあたりを思い出す。光や色合い、雰囲気がいい。一目見て「あ~狙ってるな」と思う。

・主役はほぼマイケル・シャノン
怖い悪役なんですけどすごい迫力。ユーモアのかけらもない嫌な男。悪の大魔王。このマイケル・シャノンという俳優さんはとにかく迫力がすごい。お顔はホアキン・フェニックスに似ているのにホアキンさんのような柔らかくて弱い部分が全く見えない。この映画でもゴリゴリに悪い人になりきってる…それが凄い。…実はあまりにも悪い印象なので俳優さんに興味が湧いてTV出演のインタビューを見てみたら超面白いお茶目な人だった。驚き。ファンになりそう。

・全体に演技が上手い
ほぼ全員上手い。マイケル・シャノンさんの他にも役者さん達は皆上手い。主演のサリー・ホーキンスさんが喋れない役なのに演技だけでも観客の涙を誘う。全体のレベルが高い。

・半漁人を演じた俳優さんのカラダのバランスが素晴らしい。
カラダが綺麗な人っているのね。この俳優さんダグ・ジョーンズさんはこの監督さんと組んでいつも被り物をする役で有名だそうです。


★ネタバレ注意


●残念なところ

・ユーモアがゼロ
設定が似ていると書いた『スプラッシュ』は全編がユーモアに溢れていたんですよ。どうせファンタジーなら可愛くておかしい方がいい。しかしこの映画は妙にシリアス。それに暴力描写も多くて痛い。テーマがファンタジーで演出も漫画っぽいのに、全体に重苦しい雰囲気でユーモアを感じにくいのには違和感があった。雰囲気に馴染むまで時間がかかった。

・薄っぺらいラブロマンス
ロマンスが簡単すぎ。最初の出会いは女性が水槽に近づいていって半漁人にゆで卵をあげただけ。それだけで半漁人が急に手話を理解し始める。簡単すぎ。異質の者達が恐る恐る徐々に徐々に近づいていって理解しあうプロセスが殆どない。女性は怖く無いのかな?ゆで卵をあげたら次は音楽を聴かせて…もうお友達。異質の者と友情を育むのならもう少し繊細なプロセスを見せて欲しかった。

・仲良しになる
一番の問題はここ。ちょっと無理ですよね。出会いのロマンスの描写(友情を育むプロセス)が短いから簡単にそちらに行ってしまうのも納得が行かない。いやそれ以前に魚…鱗…冷たい…むむむむりだわ。脚本が男性のせいなのか…どうも女性の事がわかってないのではないか。どう考えてもいやだ。会話もできないから相手の事が理解も出来ないのに。要はイノセントな友情に性を持ち出すから問題なんですよ。微笑ましい友情に留めておけば納得できたと思う。『E.T.』も『未知との遭遇』も…友情だけで十分じゃないか。Hを話にとり入れるのならもう少しユーモアが欲しい。この映画は品がなくて不快これも『スプラッシュ』に軍配があがる。あれは微笑ましくてかわいかった。

・結構痛い場面が多い。
おばちゃんには痛過ぎ。

・猫 😿

・余計な話が多すぎる
老齢の男性が会社からクビになってイラストレーターの仕事をしている…ゲイだからアウトサイダー…詳しく描いているんですけど必要性を感じない。孤独な男性だという情報は脚本でほのめかすだけにして、その時間を本題の半漁人と女性の出会いの描写に使って欲しかった。細々と散りばめられた他のエピソードの数々も…どうも納まりが悪い。

・狙いすぎの妙な雰囲気
カメラワークも演出も狙ってますね。これはアートな映画ですよ…という感じ。ジャン=ピエール・ジュネ監督…『アメリ』を思い出す…主役の女性がちょっと妙な子。悪役は極端な極悪人。ロシアのスパイはいい人。肝っ玉オバチャンの同僚。結構痛いグロ描写。不必要に多い性的な描写。バスルームの水タンク化も嘘っぽい。…キャラも演出も全体に漫画っぽい。しかしユーモアに欠ける。
『アメリ』はちょっと妙な感じがユーモラスな映画全体によく馴染んでいた思うけれど、この映画はどうも納まりが悪い。妙だからアート風というのも違うと思う。


うだうだ文句ばかり書きましたけど、要は世間の評価があまりにも高いので期待しすぎちゃったのよ。しかしこの映画が92点で『Greatest Showman』が55とは…おかしいですよね。プロの批評家達にとって「いい映画」とは何なのだろうと考えさせられる。ほんとに。

私はこの映画をいいとは思わない。なんだか全体にやたらと不快に感じた。キモチワルイそれに演出ばかり凝っているけど内容は結局『スプラッュ』じゃん。しかしダリル・ハンナちゃんの人魚のほうが可愛いかったし、あの映画はもっと夢があったよねぇ…と思ってしまった。ファンタジーは馬鹿馬鹿しいほどファンタジーらしくあってくれたほうがいい。『スプラッシュ』の最後のトム・ハンクスは竜宮城で幸せになっただろうなと思ったもの。

この映画のイライザさんはアマゾンのジャングルであの半漁人の嫁になったら苦労しそうだわねと思った。